2018年12月25日
第214回 「野原越東井戸改修の碑」
えー、どうでもいいことではありますが、今日は平成最後のクリスマスです(単に平成最後と云ってみたかっただけ)。クリスマスだからと云って世間に媚びたりしません。いつも通りに粛々と淡々と、いつもの「ん to ん」でございます。そして相も変わらず地味で地道な井戸にまつわる石碑シリーズです。
今回のタイトルは珍しく、意匠を汲んでのオリジナルとなってます。理由は単に、石碑に刻まれている文言が、それっぽいタイトルにしづらかったからです。そして単純に、第208回「泉水 野原後西支部井戸」の続き、続編だからです。なのでまずは第208回を読んでいただいてから、こちらに進まれた方が導入としてはよいかと。
ええと。先に謝っておきます。
今回の石碑はご覧の通り、時々ある自立してない系です。そしてこれで内容は、ほぼほぼおしまいです。
この細く小さな石碑には「大正十二年三月修」と刻まれています。折れた根元に近い部分にあたる、最後の文字が「修」なので、たぶん「改修」いや、「修繕」ということであろうと推察しました。
井戸の場所は城辺線を利用する島の人たちが、漠然と思い浮かべる野原越。いわゆる中休み交差点のあたり。交差点から東に少し奥へ入った集落の中です。先の208回をおさらいすると、野原越集落は東西(民俗方位)に長く、このあたりは東(地図的にはどちらかと云えば南北に長く、ここは南に位置する)に位置するので、東支部(1班)の井戸ということになります。とはいえ、西支部のように石碑として明記されてはいませんので、その点は残念です。
肝心の井戸本体の方ですが、これまでこの井戸の前はいくどとなく通っている道の脇にあったのに、まったく気づきませんでした。どうやらタイミングが悪く、いつも草木が繁茂していて気付く事がなかったようです。たまたま突発で井戸の所在調査をした時は、井戸願いでも行われたあとだったようで、綺麗にまわりの草木が刈り取られ、掘り抜き井戸がその姿を現していました。
その井戸の口を覆い、分厚い蓋になっている岩には、がっちりガジュマルが3本くらいしがみついていました。おそらく井戸まわりの伐採とともに、根の部分を除いて幹や枝は限界まで切り取られているのですが、禍々しいほどに岩の蓋に喰らいついたまま生き残っています。さすがカジュマルです。溢れんばかりのすさまじい生命力を見せつけてくれます。
そんな井戸の奥に拝所が作られ、折れた石碑と香炉が安置されています。線香やガラス製の杯(おそらく酒を注ぐ)が供えられるのはよく見る光景なのですが、紙銭(カビジン)らしきものが供えられているのは珍しい気がします。勝手な憶測ですが、香炉の脇に古びた賽銭がたくさん積まれているで、この井戸に拝むと商売繁盛(お金からのインスピレーション)につながったとかなとかというよな逸話がもしかしたらあるのかもしれません。
さて、こうなると残る2班。中支部の井戸も気になるとこなのですが、あたりはつけていますが、残念ながらまだ調査を完了していません(碑があれば取り上げられますが、なかった場合はどこかでこそっと報告します)。
この野原越近郊には、こうした未調査の井戸がまだあります。そんなひとつが盛加井(公園のある盛加越ではない)てす。
資料によると先の大戦で軍が既存の井戸を改修したらしいとのこと。こちらもあたりはつけているものの、未だ調査は完了していません。
【左 袖山東井戸。畑の中にあるので、シーズンによってはキビに埋もれている】 【右 宮古島防禦配備図より。井印が袖山東井戸と目される。隣りにある20H×2と、ロに・の印は砲台のことで、現在の袖山浄水場に位置する】
尚、この近くにある袖山東井戸は、キビ畑の中にある井戸で、軍の作井隊によって掘られたものではないかと睨んでいます。というのも、水源の乏しい宮古に軍を展開するにあたり、井戸掘りの専門部隊である野戦作井隊を投入しており、師団直轄(野原岳中心)の工兵隊隷下に、野戦作井第十六中隊。東地区(主に城辺方面、60旅団隷下)に、野戦作井第九中隊。南地区(主に下地・上野方面。歩兵第三聯隊隷下)に、野戦作井第八中隊が配置されています。
しかし、野戦作井隊は直接の戦闘部隊でもなく、工兵としても砲台や飛行場のように判りやすいものを構築している訳ではない上に、部隊編成や主な生息地といった部隊に関する資料がなく、どれだけ井戸を掘ったのかすらもはっきり判っていません。しかし、この袖山東井戸の周辺には集落がないのにも関わらず、立派な掘り抜き井戸があります。また、米軍の空中写真によると、部隊が生息しているとみられる痕跡もあり、作井隊の掘った井戸なのではないかと見られています。謎の野戦作井隊についても、いつかその全貌を解明してみたいものです。
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
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