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2018年10月05日

log17 「台風~今昔よもやま話~」

log17 「台風~今昔よもやま話~」

こんにちは!。
今年の宮古は台風の当たり年ですね。24号が去ったと思ったら間髪入れず25号が襲来。いったい何号まで発生することやら。はぁ~、厄介!。
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離島のイチ主婦としては、家や農作物の被害の心配もさることながら、家族の食料確保が懸案事項の第1位であったりします。
というのも、島の物流は沖縄本島からの船便が頼り。台風で海が荒れると欠航してしまうので、牛乳やヨーグルトといった日配品はあっという間に売り切れてしまうのです(2018年春、島唯一の酪農牧場が廃業し、島内での牛乳の生産が終了)。
その他にも、島外から届くすべてのものが品薄になります。ガソリンも含めて(今回は2号連続だったことから、一部ではガソリンの購入制限も)。

台風はだいたい1日もあれば過ぎるでしょ?、と思っている内地の方も多いと思います。しかし、暴風域を出たからと言ってもすぐに船が来るわけではありません。しばらくは“うねり”があって海況は荒れたままです。しかも、こちら側(宮古島)が穏やかになったとしても、約300キロも離れた、あちら側(沖縄本島周辺)の海況が荒れていれば、やはり船は来ないのです。はぁ〜、難儀!。
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そして停電を見越しての買い置き食品ナンバーワンは、なんと言ってもカップ麺ですが、これもすぐにスッカラカンになります。SNSでもスッカラカンになった商品棚の写真をたくさん見かけました。もう離島における台風時の風物詩と言っても良さそうです。

私の頭の中も台風で掻き乱されたかのように、とっ散らかっていますが、今月の「見聞録"」も、私のドゥーカッティーな考察を交えて紐解いていきたいと思います。

【厄介】やっかい。
意味も用法も日本語と一緒です。
面倒なこと・扱いに手数がかかり煩わしいこと、ですが、宮古では使う頻度が高いように感じます。面倒くさい事柄や人に対して「はぁ~、厄介!」と吐き捨てるように言うとネイティブな感じになります。

【難儀】なんぎ。
くるしみ悩むこと。苦労すること。
面倒なこと。迷惑なこと。処理をするのが難しいこと。
これももちろん日本語にある言葉ですが、「難儀するなよ~」「難儀させてごめんね」など、宮古では日常で良く使われます。
「難儀!」とひと言で言い放つ場合もあります。
そうそう、関西でも「難儀やなぁ」などと使いますね。

さて、こんなに便利な現代でも台風の襲来となると右往左往してしまうのに、いったい昔の人はどのようにやり過ごしていたのでしょう?。
職場の利用者さんに聞いたところ、昔は茅葺きの家(カヤヤー)がほとんどで、コンクリートの家(スラブヤー)はお金持ちだけだったそうです。

そしてカヤヤーは大きい台風の度に飛ばされるので、大事なものを抱えてはスラブヤーに避難させてもらっていたとか。
では、ご近所さん達の避難所となったスラブヤーでは、みんなの食事をどうしていたのでしょう?。
スラブヤーに住んでいたおばあちゃんに聞くと、「時間が短かったり夜中だったら特に食事は作らなかったけど、そうね、ウプナビで芋を炊いたり、ナビパンピン(沖縄で言うヒラヤーチ。チヂミみたいなもの)やソーメンを食べたりしたよ」と教えてくれました。
ご近所さんみんなが家族みたいですね。

中には「台風のときは手打ちうどんを作って食べた」という方もいました。小麦粉と水を捏ねて作ったそうです。するともうひとりの90代の女性は、うどんの話に頷きながら「そうよ。手打ちうどんと、天ぷらも作ったよ」と涼しい顔で言っています。
台風で停電するから手抜き料理でいいや、とインスタント食品を買いだめしている自分が恥ずかしくなりました。
手打ちと手抜き、似ているけど全然違いますね。反省。
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【ウプナビ】
「ウプ」大きい。「ナビ」鍋。
お祝いや行事では無くてはならない大きな鍋。揚げ物から汁物まで何でも作る。
当たり前だけどフタも巨大。
洗うときは野外のホースでワイルドに洗う。そして、その辺の外壁なんかに立てかけてワイルドに水を切る。
場所によっては、「シンメー鍋」とも呼ばれています。「シンメー」とは4枚の意味で、かつて鉄板4枚を叩いて鍋を作っていたことから名付けられています。

【家を葺く】
やーをふく。
家を建てることの意味のようです。
「葺く」を辞書で調べると「かわら・板・カヤなどで屋根を覆う」とあり、家そのものを建てることではなくて、あくまでも屋根ですね。「茅葺き屋根」という言葉もありますもんね。
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現在は茅葺き屋根の家は皆無で、コンクリートの建物がほとんどです。そして暴風に飛ばされる心配のある看板は比較的少なく、建物自体にお店の名前や会社名をペイントしていることが多いです。
今後、内地にも強い勢力の台風が上陸することが度々あるかもしれないと考えると、この、直にペイントする式は危険予防に有効だと思うんだけどなぁ。

さて、宮古では新築の家を建てている途中で「スラブ打ち」というお祝いがあります。内地で言う「上棟式」に相当するものとのこと。
天井部分にコンクリートを流し込む作業が終わると、職人さん達を労ってご馳走を振る舞う風習だそうです。近所の人や友達も招かれます。招かなくても建築中の建物の側でテントを立ててお祝いしているので、気配を察して来るパターンもあると思われます。
私も友人の「スラブ打ち」に行ったことがありますが、テントの下に会議用テーブルとパイプ椅子が並べられ、大勢の人が来ていてビックリしました。

家が完成した際には、もちろん新築祝いも盛大に行われます。
余談ですが、「スラブ」は宮古口かと長年勘違いしていたけど英語(slab)なのですね(笑)。
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ところで。
「台風で茅葺きの家が飛ばされてた後ってどうするんですか?」と尋ねたら、おばあちゃん達「また作るさ」と涼しい顔で答えてくれました。何という逞しさ!。
私も宮古の方々を少しは見習いたいと思います。手抜きうどんならぬ、手打ちうどんも今度の台風のとき作ってみようかな。

ではまた来月!
あとからね~。

※今回の白黒写真は沖縄県公文書館よりお借りしました(1966年の第2宮古島台風コラの実際の被害の様子です)

【ライタープロフィール】
川上 良絵~かわかみ よしえ~
神奈川県出身。2002年、宮古島に移住。
保育と介護、学童クラブのお仕事をしつつ、書店や小学校などで『おはなし会』を行なっています。
絵本の読み聞かせや、紙芝居の他、切り紙、折り紙、マジック、ミャークフツクイズなどなど、オマケコーナーも大好評。
参加費無料です。ぜひせび、遊びに来てくださーい!

『おはなし会』スケジュール ※どちらの店舗でも、およそ30分ほど。
◆TSUTAYA宮古島店
  毎月第4日曜日 午後4時から
◆ゲオ宮古店
  毎月第1日曜日 午前11時から




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