2018年06月29日
第5話 「島ことば」

第4話 「島酒と望郷」
近ごろ家で、『スケッチ オブ ミャーク』のCDをよく流す。
久保田麻琴というアーティストが、宮古の人々から記録した古謡をそのままに、重ねる音をアレンジして仕上げたとても雰囲気のある音楽CD。
映画にもなっている。
宮古島にいた頃、平良図書館で借りられるCDの中に、もちろん宮古民謡もあったので、それを、当時の部屋の、畳の上に寝そべって聴いたことを思い出す。

好きな謡があってね。
そのうち三線教室に通い、宮古民謡の基本的なものから弾きながら唄えるように、練習した。
師匠のステージに、たまたま太鼓で参加したときに、私は三線よりも、唄よりも、太鼓がいいと言われ、そうかと思い、なんとなく民謡を、リズムで聴くようになったりして、民謡を、うたうことが宙ぶらりんになって。
畳の上に大の字に寝そべって、民謡CDを聴いていた。
あの畳は、数日間家に戻らなかったら、閉め切っていたせいでカビた。
うっすらとカビの粉が、畳の上に全面に被ってるいてね。

今、八丈で窓に近いところの畳に、緑色の粉が発生しても、なんのことはない、掃除機をかけて、固くしぼった雑巾で拭くだけだ。
八丈島は、梅雨真っ只中です。
猛烈な湿度により、紙もしなしなになっていますが、宮古と大きく違うのは、気温がそんなに、高くないことです。
むしろ寒い。
宮古の海の水温を思い出すと、とにかく逃げ場のない暑さの中、海で汗を流すという過ごし方だったけれど、こちらは海水が冷たいので、そして気温が、内地の東京よりも低くむしろ過ごしやすいため、全然海に入りたいと思わないのです。
そんな中、八丈語教育推進委員会という、集まりに参加してきました。
ユネスコの認定する、日本における消滅言語8つ。
アイヌ語,八丈方言,奄美方言,国頭方言,沖縄方言,宮古方言,八重山方言,与那国方言
宮古の言葉も、この8つのうちのひとつです。

明らかに宮古は、言葉がまだ残っている。
「おごえ」「あいじゃ」など、言葉自体を、若者だって子供だって使っているし、言葉のイントネーションや語尾は、とても自然に、宮古的だ。
「~べき」、「~か」、「~さ」。
伊良部に至っては、「~い」。
そして、「だからよ」。
私ももう忘れかけてしまって、自分の口には出てこないけれど、いつだったか東京で、居酒屋の店員の女の子が、注文を取りにきた。
その話し方ですぐにわかって、沖縄出身ですか、って、話しかけちゃったよ。
共通語を話していても、愛すべき独特のイントネーション。
懐かしくってね。

八丈には、それがない。
全く、どこにも八丈らしい言葉がない。
言葉の語尾にもないのだから、人々が話す言葉は、東京と同じ。
もう、話す人が、80歳以上のごく一部とか、そういう少数でしか、ないのだという。
同じ消滅言語に認定されていても、沖縄に比べて八丈の場合は、もう本当に虫の息だ。

町の教育目標にも文言があるほどなのだ。
島言葉をまとめた辞書のような本もあるが、
大事なのは、言葉の場合、発音とかイントネーション。文字だけでは、伝えきれないのだ。
口伝。
本当は言葉は、民謡として、歌われていくもの。
そういう古謡が、この島にちゃんとあるのだろうか。
私は、それを探したいと思っています。
それを、うたえる人に、直にうたを、習いたいのです。
今回はこのへんで。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
【島旅日記~八丈島と、フラクタルの魔法】
第1話 「宮古の暮らし、八丈の暮らし」
第2話 「海までの距離感」
第3話 「路傍の燈り」
第4話 「島酒と望郷」
※ ※ ※ ※ ※
【おしらせ】
ATALAS Blogでは、毎週火曜日と金曜日の週2回にレギュラーコラムの連載を続けて来ましたが、2018年7月から新たに、日曜日更新の“日曜版”をスタートすることになりました。
それに伴い、これまで不定期に連載を続けて来ました、『島旅日記~八丈島と、フラクタルの魔法』がお引越しとなります。
『ATALAS Blog 日曜版』の第2週・第4週の日曜日に定期掲載。月に2回のお届けとなります。
ゆったりと、のんびりと、たゆたうように、“島”の話がたっぷりと楽しめるようになります。お楽しみに~!
扇授 沙綾(せんじゅ さあや)
1976年 東京生まれ。
2003年から2011年まで、宮古島・狩俣に住む。
伊良部島へフェリーでの1年間の通勤を経て、東京へ。
現在、東京在住→2018年、八丈島へ。
12歳の息子と二人暮らし。
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
│島旅日記~八丈島と、フラクタルの魔法