2018年10月28日
第12話 「ススキが海風に靡いている」
いつの間にか、ススキの穂だらけになってしまった、島のどこもかしこも。
シュッと伸びた柔らかなアイボリーのふわふわ。
綺麗だな、特に夕日を浴びたとき、海を背にしているとき、青空の下、もしくは、明るい月の夜。
ススキは絵になるなぁ。
そして、あっという間に冬を運んでくる。
島の冬は普通に寒いそうだ。
雪が降るのは稀だとしても、暖房はもちろん必要で、着るものも都内の冬と同じような感じだと。
セーターとか、梅雨時期の猛烈な湿気に、衣装ケースの中で傷んでしまうのではないかと心配だったけれども・・・。
11月になる。
今年はもう、残すところあと2か月。
運動会や文化祭、地元の神社のお祭りなど、10月は行事の多い月だった。
伸び放題の髪にかまう暇なく、金八先生みたいな髪型になっている、私。
コンタクトレンズを落としてしまった。
円錐角膜で、普通のレンズでは視力矯正がむずかしいので、特殊なハードレンズを使っている。
そのため、なかなか取り寄せられない。
眼科の処方箋がないと・・・ということなのだ。
島に眼科はない。
月に1回程度の、町立病院での臨時診療のみだ。
仕方がないので、眼鏡で過ごしている。
眼鏡では矯正しきれなく、段差が見えない。
だから、慣れないところへ行くのは怖いのだが、八丈島内であれば、なんとかなっている。
都内は看板や表示など、街に文字が溢れていて、文字が見えないと迷う。
例えば地下街なんかは、どちらへ進めばいいのか、さっぱりわからない。
けれどもこちらでは、文字を見つけることの方がレアだ。
よくよく見ようとして目を凝らすのは、スーパーで食材の値段を見るときくらい。
あとは、人を見て、誰か判別できるくらいの視力があれば、暮らしていける気がする。
ただし、夜の暗闇はとても深いので、日が暮れてからの車の運転だけは、自分の目の力の弱さが心もとない。
夏から秋にかけて、雨が多かった。
9月は6月よりも降水量が多いのだそう。
今年は少し後ろにずれて、10月の頭くらいまで、常に雨が降るつもりで計画をしていた。
秋の長雨だった。
いつの間にか雨が少なくなって、太陽が頻繁に顔を出し、秋晴れの日が続くようになったなぁ、と思ったら、中秋の名月も過ぎていた。
衣替えをした。
長袖や上着など、ウール素材のスカートやスラックスが、そろそろちょうどいい気温になってきたな。
仕舞っていた息子の制服のシャツ、長袖を出した。
ハンガーに掛けてみたら、なんだか袖が短い。
着させて見たら、いつの間にか、腕がこんなに伸びていたんだ。
腕だけじゃない。肩も、胸も、シャツが狭そうになっていて。
季節が、春から秋になるだけの間に。
大人である私はもう、同じものを20年も着ているというのにな。
伸びている。
今が、大事なんだ。
大人である私はもう、身長が伸びたりはしないけれど、こんな人間になりたい、と思う憧れだけはある。
それに向けて心は伸びやかに、たおやかに、謙虚さを、忘れずに、日々、変容していきたい。
人生の、春から秋に、なるように・・・。
扇授 沙綾(せんじゅ さあや)
1976年 東京生まれ。
2003年から2011年まで、宮古島・狩俣に住む。
伊良部島へフェリーでの1年間の通勤を経て、東京へ。
現在、東京在住→2018年、八丈島へ。
12歳の息子と二人暮らし。
「方言サミット2018 宮古島大会」
期日 2018年11月24日(土)
時間 10:00~18:45
場所 マティダ市民劇場
【入場無料】
※八丈方言も参加します。
詳しくはコチラ
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
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