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先週の西更竹(小字)に引き続き、(大字)長間三区の南部、長南長南地域(地域名)の南に広がる根間地(地域名)の最南端に位置する南根間(小字)の井戸を“建設”した石碑です。
県道78号線(城辺線)沿いに広がる南根間は、県道を隔てて、下里添(大字)の西更竹(小字)、西里添(大字)の(小字)山地・更竹(西里添にも更竹があったことを失念していました)に接しています。すでにここまでの説明でも大量の地名を消費しているだけでなく、先週からゲシュタルト崩壊しそうな勢いで“更竹”が繰り返し登場していますが、ＳＡＮ値を削られ過ぎないようにお気を付け下さい。

石碑のある井戸は城辺線(県道78号線)脇に位置する、とても深く大きな遊水池の裏手にひっそりとあります。周囲には数軒の民家が立ち並ぶ南根間の集落とパイヌ御嶽があるだけの静かな里山です。

井戸そのものは一段低くなった場所あり、低い石組に囲まれた掘り抜き井戸の形で据えられています。井戸を囲う石組の様子をよく見てみると、道路側の入口部分とは別に、正確な用途は不明ですが遊水池側に流れ出しのような感じで、一部の石組が途切れている部分がありました。

【左　南根間井戸の全景。奥の茂みの裏が遊水池になります】
【右　時に池のように水が溜まっている巨大な遊水池を覗き込む】

石碑には『建設記念　清泉水　大正九年十一月』とだけ記されています。
碑文を順守すると改修ではなく建設と刻まれていることから、井戸が掘削された年月と考えられます。前回の“お隣”西更竹の井戸の掘削も、ほほ同時期の大正６(1917)年ですから、なんとなく長南地域の隆盛が見えてくるような気がします。

【下　井戸のそばにある茂みは、パイヌ御嶽】
この井戸がある根間地界隈は戦時中、独立混成第60旅団通信隊が駐屯していたそうで、井戸は部隊の炊事場になっていたと云われています。周辺を見てもパイヌ御嶽は兵舎として利用され、伝書鳩小屋跡や自活畑などがあったそうです(現存している御嶽近くの牛小屋にある大きな木は、当時からあって、この木から召集ラッパが吹かれると点呼場に兵士らが集合したと云われています)。
また、現在は遊水池となっている付近には、連合軍の攻撃で爆弾が落され、大穴があいたという逸話があるそうなのですが、遊水池の穴の大きさを見るに、すべてが爆弾によって出来た穴とは考えにくいので、近隣の圃場整備に伴い掘削されたものだと考えたいです。

この根間地の道向かいになる西里添には西城小学校(と中学校)があります。この学校はかつては西城辺小学校と呼ばれていたものが、短縮されたようなのですが、城辺では福里の城辺小学校に継ぐ歴史があります。
そしてその最初の学校は、こちら側の根間地にありました(東根間)。

【上　長間尋常小学校跡　画像の奥に薄っすら見えている電線のが城辺線】

現在は一面の畑で、城辺町教育委員会が建てた、「長間尋常小学校跡地」の木製の標柱が道路脇に一本あるだけですが、城辺西部の公共教育の発祥の地と云えます(あまり知られていませんが、城辺町教育委員会はこの手の木柱を旧町内のあたこちに建てており、安価で史跡を記す地道な努力がなされ、知られざる小さな史跡を今に伝えてくれています。近年はさすがに老朽化して朽ち始めているので、ぜひ宮古島市に鋼製の標柱だけでも建て直してほしいと願っています)。

学校史を紐解いてみると、まず、明治33(1900)年７月に城辺尋常小の長間分教所として開校します。その後、明治41(1908)年に長間尋常小学校として独立をし、翌42(1909)年に西城辺尋常小学校と改められます。
そして大正７(1918)年に、校名を西城辺から西城に改称しますが、この時の理由がなかなか面白い。

「西城辺ハ口唱スルニモ書記スルニモ冗長ノ嫌アリ旁々平良村西辺小学校ト往々郵便物ノ行違アリ、不便不尠ノ故ヲ以テ大正七年三月二十二日管理者ニ校名ヲ「西城(セイジョウ)」ニスル様申請置キタリシガ本日島廰告示第三号を以テ愈々認可告示アリタリ」

西辺小と混同するのは字面的に判らなくもありませんが、云うのも書くのも長いってのは、たぶんある意味、城辺人気質なのかもしれません。たって、長南≒長間南、西西≒西里添西、下北≒下里添北、福東≒福里東と、あれもこれも色々とすぐに省略したがるんですもの。