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2017年02月14日

第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」

第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」

今回紹介する石碑は、例によって石碑ではありません。ちょっと気になったコンクリート製のモニュメントです。設置されているのは伊良部島の佐良浜、前里添の県道の大カーブのところ。位置的におそらくたくさんの人が目にしてはいるとモニュメントです。
第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」
沖縄県道90号下地島空港佐良浜線(沖縄県道204号長山港佐良浜港線との重複区間)が、佐良浜断層涯を一気に登るために、S字を切ってコンパクトに高度を稼ぐ道路形状になっており、カーブ半径も勾配もかなりきつく、難所のひとつとなっています。
港側(低位置)のカーブの内側は、半円形の残地が花壇になっており、モニュメントはその花壇の中に建てられています。
モニュメントの形状は三角柱で、頂頭部に球が乗せられた構造です。三つの側面のうち、港側からと崖上からの路上から見える面には、今回のタイトルにした「海と空にひらかれた伊良部町」と書かれています。
残る一面はカーブの外に向かって書かれているので、車で走行中に確認することはかなり困難な上、書かれている文字が古くなっており瞬時に読むことは出来なくなっています。

第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」現場で確認しみたところ、どうやら「伊良部架橋早期実現」と書かれているようです(じっくり見ても判読はかなり困難)。2015年に伊良部大橋は開通しましたので、書かれている言葉は実現したことになります。
二側面に伊良部町の名前があるので、このモニュメントは町で施工したものだと思われますが、道路そのものは戦後、1953(昭和28)年に琉球政府道国仲佐良浜港線として指定されています。
尚、当時から後の県道204号となる琉球政府道伊良部港佐良浜港線は重複区間となっています。現行の県道204号は長山港を起点としていますが、住所的にここは池間添となるので、伊良部港と呼ぶにはちょっと違和感があります。ただ、当時すでに長山港としての整備は始まっており、県の港湾課の記録では1972年5月15日が設立日となっています。しかし、この日は復帰の日ですから、それ以前から整備されていたと考えられます。
では、字・伊良部に港はないのかいうと、渡口地区(下地島との間の入江を浚渫した伊良部橋のたもと)は漁港として整備されているだけです。また、渡口の浜(乗瀬御嶽側)の防波堤の先端は、かつての船着場(伊良部丸遭難の碑)なので、伊良部港と呼んでもさしつかえなさそうですが、そうした呼称はこれまで聞いたことがないので、ここで云いきることは出来ません(平良の蔵元へ納入する貢税は、長山に集積されとも云われている)。また謎を作ってしまったかもしれません・・・。

話が大きく脱線しましたが、モニュメントは「架橋実現」を謳っていますので、作られたのは架橋前なのは確実です。伊良部大橋開通記念碑に記載されている、「1974年10月 川満昭吉伊良部村長が沖縄開発庁長官へ口頭で要請」という動きがありますが、この時はまだ伊良部村なので、1982年に町制施行以降に作られたものであると云えます。
もう少し突っ込んで調べてみると、1991年に伊良部架橋促進協議会発足し、3月に伊良部架橋促進宮古圏民総決起大会が行われています。さらに翌1992年には伊良部架橋促進青年会議が発足(この年は町制10周年にあたる)しており、1993年には那覇で在沖宮古郷友会が伊良部架橋早期実現総決起大会を開催していることが判りました。この頃が一番架橋熱が高かったのではないかと思われ、モニュメントが建立されたのはこの頃なのではないとかという結論に達しました。まったくモニュメントの設置情報が見つけられなかったので、これが今回の精一杯となってしまいました。

なので、ちょっと周辺のオマケ・・・。
第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」このTOP画像の海。道の向こう側の敷地の先は断崖絶壁です。海を隔てた先に佐良浜の元島である、池間島が見えています。
そして敷地の片隅には池間島の方を向いた小さな拝所があります。なんでも佐良浜のユークイ(佐良浜といえぱミャークヅツのイメージですが、ユークイも行うそうです)の時に拝むのだそうです。佐良浜の集落を作った池間民族の距離感をどことなく感じさせる場所のひとつです。

モニュメントのある場所は前里添の集落端でもあり、道を挟んだ反対側はお墓がいくつも並んでいます。崖沿いの険しい場所にあるので、もしかすると昔は岩影墓だったかもしれません。
そして集落側には車も走ることが困難な狭い路地(階段道も多い)がいく筋もあります。そのひとつ、モニュメントの下側の奥に少し進んだところに、奇妙な塔のようなものがちらりと見えています。太くて背の高いサボテンのタワーがあります。このサボテンは路地奥のお家の庭にあるものなのですが、あまりの大きさに二度見してしまうほどです。
第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」第122回 「海と空にひらかれた伊良部町」
続いては坂を登った一段上の場所には、ローカル色の強いスーパー「Aコープさらはま」があります。その交差点から町並みを覗き込むと、レンガタイルを外壁に使った三階建てのビルが通り沿いに見えます(この狭い通りはバス通りでもある)。そのお隣の一軒家にもレンガが・・・よく見ると、こちらのは壁になんと手描きで描かれたレンガの絵なのです。同じような外壁が二軒並んでいるので、フェイクがホンモノのように見えて来るという面白いことになっています。

最後はこの交差点からさらに上へと続いている県道90号です。この県道はそもそも崖下の空間に盛土をして道を作っているのです。いうなれば空中に道を作った形になるので、元々この場所に通っていた道と県道が立体交差になっています。
山のない宮古ではトンネル(状の道)は少なく、伊良部島で唯一の構造物ともいえます。下からトンネルをくぐって道を登ってゆくと、最後は崖上に近い丁字(現行の県道以前の旧道)にぶつかります。けれど、無情にも道路礁式は下る道にしか曲がることが出来ません。あとちょっとで崖の上に出れるとこまで登らせておきながら、下れというなんとも辛いオチが待っています(とても狭い集落の中の道なので走行には十分に気を付けてください)。




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この記事へのコメント
コメント失礼します。

最初の写真の三角柱のモニュメントは以前球の上にサシバの像があったのですが、台風14号(マエミー)により落ちてしまいました。

どなたかが拾って保管してあるとかないとか聞きましたが真相は謎です。
Posted by P at 2020年10月03日 01:02
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