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2015年08月28日

その4 原生酵母の島酒づくり

その4 原生酵母の島酒づくり

云うまでもないことだけれど、泡盛は米(多くはタイ米)と水でできている。作り方はシンプルで、蒸し米に黒麹菌を散布し十分に繁殖させて米麹をつくる。そこへ水と酵母を加えると発酵しアルコールができる。それを蒸留したものが泡盛だ。
泡盛を泡盛たらしめる存在が黒麹菌。『泡盛の文化誌』(荻尾俊章/ボーダーインク社)によると、泡盛工場からはかつて多くの種類の黒麹菌が見つかったが、戦後は種麹店が販売する2種のみになったとある。

その4 原生酵母の島酒づくり黒麹菌は米を糖化させ、でんぷんをブドウ糖に変える。そのブドウ糖を食べてアルコールをつくるのが酵母の役目だ。酵母も黒麹と同様、そもそもは自然界にある菌類だが、昭和54年に『泡盛1号』が開発され、さらに平成元年に1号を改良した『泡盛101号』が世に出ると、そのあまりの能力の高さと使い勝手のよさに、以後ほとんどの酒造所がこの酵母を使うようになったという。

研究を重ねた結果、新しいものが開発されることはもちろん悪い事ではなく、泡盛はこういった研究者たちの努力の結果、生産性は飛躍的に向上し、品質も安定した。そんな中、あるきっかけで見つかった宮古由来の原生酵母で泡盛をつくるという挑戦が、多良川酒造で始まっている。

まさかバイオエタノール用の酵母に
こんな能力があるなんてね
正直びっくりしたし、半信半疑だった


そういうのは、宮古島で平成16年から開始されたバイオエタノール実験事業に取り組んでいたオクシマさんだ。サトウキビから分蜜糖をとった後に残される糖蜜でエタノールを生成するのだが、宮古の糖蜜は発酵しにくく、バイオエタノール先進国のブラジルやインドで使われれている酵母では役に立たない。そこで、新たに島の原生酵母を見つけるのが急務だったという。

日本酒類研究所の専門家たちの力を借り、島中で酵母探しが始まった。葉っぱを採集し、土を掘り、石をひろってはポリ袋へいれ、島のあらゆるカケラを空気とともに研究所へ送る。
研究所では、そのひとつひとつを試験管の中で培養し、有望な酵母を見つけ出すという気の遠くなる作業だ。
その4 原生酵母の島酒づくり
挫折を繰り返しながらも地道な調査が続けられること実に3年。ついに条件を十分にクリアする酵母が宮古製糖工場内から発見され、宮古島で見つかった17番目の酵母という意味で、『MY17』と名付けられた。
それだけでも画期的なことだったが、MY17にはおまけがついていた。

「この酵母は4VGの値が非常に高い」
酒類研究所からもたらされたMY17のもうひとつの能力だった。

泡盛は熟成させるほど、香りが高くうまみが増す。長い年月をかけじっくりと寝かせた古酒には、ほのかなバニラ香と甘みがある。この変化をもたらすのが4VGで、MY17には泡盛101号の4倍以上の力があるという。単純な計算でいえば、3年ほどの熟成で12年ものの香りとうまみが期待できるかもしれないのだ。

それは偶然ではなく必然だと思ったね
因縁の巡り合せだと
その酵母はうるかの神様みたいなものなんだよ


オクシマさんは、多良川酒造にMY17を持ち込んだ。もちろん、それで泡盛をつくってもらうためである。オクシマさんの話を聞いたスナカワ会長に異存はなかった。

多良川酒造創業以前、寒露の時期になると、スナカワさんの家では、決まって汁酒と呼ばれるサトウキビの酒をつくっていた。サトウキビの根っこの部分を切って、しばらく放置すると、自然に発酵して酒になった。汁酒はうるかの御嶽に供え、地域一族の健康と繁栄を祈るのが習わしだったという。そして当時スナカワさんの家があった場所が、まさに酵母が見つかった製糖工場なのである。
「酒づくりは神の領域で、サトウキビや粟が、なぜだか酒に変わるのは神様の仕業だった」スナカワさんはいう。

その4 原生酵母の島酒づくりもしかすると、太古の昔からその地に漂っていたかもしれない原生酵母。スナカワさんがこどもの頃、サトウキビを汁酒に変えていたかもしれない原生酵母。その因縁の酵母で仕込んだという泡盛は、古酒3年の年季があけ、ほんの少しだけ市場に出されたという。長々と書いたが、残念なことに、わたしはまだ飲めていない。

《第四金曜担当》 きくちえつこ
池間島在住、足かけ 4 年のナイチャー。
宮古で出逢った「かいまい くいまい」から聞いた、ちょっと「へえ~っ!」となる話を、ゆる~ゆる~っとご紹介。
考察も、オチも、ありません。ごめんなさい・・・。

『かいまい くいまい』 = 「あの人やら、この人やら」



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