2019年04月05日
5本目 「ゴジラ対メカゴジラ」

一昨年大ヒットした『シン・ゴジラ』も記憶に新しいが、長~い歴史の中で、沖縄を舞台にしたゴジラ作品がある。今回はその『ゴジラ対メカゴジラ』をご紹介しよう。

ゴジラ映画を母親と見に行くと言えば、子どもがねだって親が連れて行く、という構図が普通だろうが、どうやらそういうわけではなかったみたいだ。というのも、翌年(1965)は『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』、その翌年(1966)は『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』と、怪獣映画とは言っても幼稚園児が見たがるようなもんじゃない、かなり怖い作品に連れて行かれている。『サンダ対ガイラ』なんてマジで怖くて、指の間からそーっと見ていたのを、今度は本当に覚えている。
その後、母との映画観賞は『妖怪百物語(1968)』、『妖怪大戦争(1968)』、ヒッチコックの『鳥』(リバイバル上映)、『犬神家の一族(1976)』へと続く。どうやら母は怖い映画が好きだったみたいだ。そんな母も3年前に他界したが、母に連れられて映画館に通っていた思い出が今の私に続いている。

さて、『ゴジラ対メカゴジラ』に話を戻そう。本作が作られたのは1974年。沖縄本土復帰(1972)から2年後、沖縄海洋博を翌年に控えた1974年は第1作目の『ゴジラ(1954)』から奇しくも20年後。ということで、本作は『ゴジラ誕生20周年記念映画』と銘打って制作された。
タイトルにもなっている『メカゴジラ』は、昨年のヒット作『レディ・プレイヤー1』の中でも大活躍し話題になっていたが、初登場が本作。その後メカゴジラは『メカゴジラの逆襲(1975)』、『ゴジラvsメカゴジラ(1993)』、『ゴジラxメカゴジラ(2002)』、『ゴジラxモスラxメカゴジラ 東京SOS(2003)』など、数多くのゴジラシリーズに登場し、大人気キャラとなった。


で、その『ゴジラ対メカゴジラ』が沖縄を舞台にしていて、沖縄オリジナルの怪獣が登場していたことを覚えている人は意外と少ないんじゃないかな? その名は『キングシーサー』! 沖縄の各家の屋根にいるシーサーがゴジラ並みの巨体を持つ神獣として登場するのだ!。
オープニングから守礼の門、識名園などが写り、修復前の当時の様子を記録している意味でも貴重だ。周りは草ぼーぼーだったりして隔世の感がある。
台詞にうちなーぐちは皆無、イントネーションもしっかり標準語のものになっていて、言葉の上からは全く沖縄は感じられないが、74年当時は方言札が終わって数年後。そういう沖縄色を出すことが躊躇われた時代だったのだろうな。ただ内地の俳優だけ使ってあまり考えずに作った結果かもしれないけど。





20周年ということでおなじみのゴジラ・円谷俳優たちが総出演。おー、岸田森だ! 小泉博だ! 平田昭彦は博士か! おー、佐原健二?!と、一人ひとり登場ごとにうれしくなる。
物語は、洞窟の中で見つかった壁画に書かれた予言から始まる。
「大空に黒い山が現れるとき、大いなる怪獣が現れ、この世を滅ぼさんとす」
「しかし赤い月が沈み、西から日が昇るとき、二頭の怪獣が現れ、人々を救う」
おもしろそうだ! おもしろそうだ! 本編は私の好きな古代遺跡と予言のパターン。
だが、特撮パートがゆるい。
わりとあっさり御殿場に現れたゴジラの前に、これまた待ってたように現れるアンギラス。
ちょっと予定調和過ぎないか?
「おかしいぞ! アンギラスが仲間同士のゴジラを攻撃するなんて!」
え? 、仲間だっけ?。
『ゴジラの逆襲(1955)』の因縁の対決再び、じゃないの? この頃の昭和後期ゴジラは『怪獣総進撃(1968)』以来、仲良しこよしだっけ。この辺のところは子供ながらも当時イライラしてたっけな?。
この頃の特撮がダメなのは、怪獣を真横から撮るから巨大感が出ない。観客の目線がどこにあるのかわからない。良い怪獣映画のカメラは、地上にいる誰かの目線から怪獣を撮る。平成ガメラ三部作が代表的な素晴らしい例だ。中野昭慶、今でこそ巨匠扱いだが、この当時はダメだな?。こだわりが感じられない。
長老の言葉(1)
「ゴジラを倒せるのはキングシーサーだけだ! だがその謎は誰にも解けるものか!」
ふむふむ、キングシーサーは沖縄の守り神。ゴジラも倒せるのか。だったらゴジラは大和の象徴か?
長老の言葉(2)
「ゴジラよ! 安豆味(アズミ)王族を滅ぼそうとしたヤマトンチュをわしに代わってやっつけろ!」
ん? じゃあ、やっぱりゴジラはゴジラ、全てを破壊するもので、沖縄だけはキングシーサーが守る構図か。


でも、結局ゴジラとキングシーサーが協力してメカゴジラと戦っちゃうんだけどね。長老の言ってることはひとつも当たらない(^^)。
メカゴジラを使って地球を侵略しようとする
敵は『ブラックホール第3惑星人』。彼らの
正体が猿人なのも当時『猿の惑星』シリーズが流行ってたからか。
玉泉洞の中に宇宙人の基地があったり、万座毛からキングシーサー出現したり、沖縄の観光地をロケ地として大プッシュ。なんだけど、主題歌『ミヤラビの祈り』を2番までフルコーラス聞くまで目覚めないって、長すぎるでしょ。でも、ゲスト怪獣で歌まであるのってモスラの他にはキングシーサーくらい? できたら琉球音階で作曲してほしかった。

キングシーサーはメカゴジラの光線を吸収して逆に発射するほど強いんだけど、動きが軽い! もっと重量感出してほしいな?。着ぐるみバトルにヤル気が感じられないのだ。吊って放り投げとけばいいんでしょ、みたいな。残念ながらこだわりが薄い。
ゴジラとのタッグでメカゴジラを倒したキングシーサーはまた万座毛の中で眠りにつく。

シリーズ中でも特色ある作品で、今あらためて見てみるのもおもしろいだろう。
【作品データ】
「ゴジラ対メカゴジラ」
公開 1974年
監督 福田純
特技監督 中野昭慶
出演 大門正明、青山一也、田島令子、平田昭彦、松下ひろみ、小泉博、ベルベラ・リーン、岸田森、佐原健二、他
久保喜広、1960年生まれ
東京在住ながら20年以上毎夏宮古に通う。宮古移住が夢。
2012、2013年、ぴあフィルムフェスティバル審査員
2013年、日本アカデミー賞特別会員
2014年、東京国際映画祭WOWOW賞審査員
以降、映画祭での審査員、シネマコメンテーターとして活動
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
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