2019年03月01日
4本目 「ウンタマギルー」


今回の作品は、あの名作「ウンタマギルー 」です。
読者諸兄は、「GORO」という雑誌をご存知だろうか? 。
昭和49年から平成4年まで刊行されていた、男性向けの人気雑誌。当時、学生だった私には、いわゆるベッドの下に隠す雑誌(笑)。その「GORO」でも特に人気だったのは、篠山紀信による「激写」コーナーだった。

だって、全編うちなーぐち、日本語字幕付きバージョンで、なおかつ、この頃の私には、睡魔が100パーセント襲う摩訶不思議ちゃんワールド全開だったんだもん!。
だが、時は流れ、沖縄・宮古に数10回通うようになって改めて見てみたら、もう傑作としか言えない名作ではないですか!。 ということで、本作「ウンタマギルー 」をご紹介しましょう。
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舞台は日本復帰(昭和47年)直前の沖縄。まだ何か摩訶不思議なことが起きてもおかしくないような時代。
いきなり始まる「ワタブーショー」。
そう、本作では、あの照屋林助さんの歌が、場面場面を繋ぐナレーションのような役割を果たして進んでいく、粋な演出。
照屋林助さんは、「りんけんバンド」の照屋林賢の父であり、前回紹介した「洗骨」を監督した、ガレッジセール・ゴリの祖父でもある、沖縄の娯楽・芸能をリードした沖縄ポップカルチャーの第一人者。
「ワタブーショー」というのは、その林助さんが昭和32年に結成したグループで、時事問題などを歌謡・洋楽などでおかしくも含蓄の深い漫談にして人気をはくした。ミュージカル調の歌と踊りで始まる本作は、沖縄風「ラ・ラ・ランド」?。
初めて見たときには思い切り面食らったが、全編、うちなーぐち、日本語字幕入り! 。
昨今の一部うちなーぐちとは違って、全面的にうちなーぐちだから、何言ってるか、さっぱりわからん。これは字幕要るわな~。
主役のギルーに小林薫。
この精悍な青年が小林薫!?。時の流れを感じる。時代設定は昭和だけど、沖縄芝居の「運玉義留」に準ずるキャラクター。雇用主である西原親方が囲っている謎の美女マレーに恋心を抱く。
このマレー役の青山知加子さん。いや~、妖艶だわ~。
最遊記に出てきそうな、色香の化物ですな。この乳でたぶらかされたら、誰でも狂うわな。

しかし、この青山知加子演じるマレーの正体は、豚の化身「ゥワーマジムン」。西原親方が運玉森の神様から預かったものだったのだ!
そうとは知らずにマレーを毛遊び(「もうあしび」:若い男女が集って飲み食いする、今で言うビーチパーリー?)に誘い深い関係を持ってしまったギルー。マレーを抱いた男はミイラとなって死ぬ運命。ギルーは仲良しのキジムナーに相談するが、そのことでギルーの運命は大きく変化していく。
今は亡き平良トミさんと、今はベテランの吉田妙子さんが出演してるけど、若いな~。
西原親方は「去勢されてもう男ではない」って言われてるけど、返還前と言っても戦後の世の中で「去勢」なんてあったのかな?。 この辺のところは不勉強なので、どなたか知っている方がいたら教えていただけるとうれしいです(コメント欄まで、よろしく!)。
ギルーが独立党(昭和45年~)に武器を流したことで、後半は一変、政治的な闘いになり、終盤は、昭和のギルーの話が運玉義留の沖縄芝居と重なり合って、芸術的にと変わっていく。
「大和の佐藤首相も沖縄に来た(昭和40年)ことだし、きっと世の中、変わるんだね」
「佐藤・ニクソンの共同声明(昭和44年)が発表されて、沖縄は日本復帰するぞ。これからは沖縄は日本だ!」
村人たちの台詞がファンタジーと社会情勢をリンクさせる。
そして高峰監督の思いはギルーの叫びとなって響く。
「わんはアメリカも日本も祖国とは思わん! この琉球こそ、我が祖国やる!」
不可解なラストシーンが意味しているものは何か?。 妖艶なマジムン「マレー」は何を象徴していたのか? 。
返還間際のファンタジーが沖縄芝居と融合し、物語の終結は本土復帰とリンクする。その摩訶不思議な世界を、照屋林助の「ワタブーショー」がポップに彩る。多面的な沖縄をチャンプルーさせた高峰剛監督の映像世界を、ぜひご堪能あれ。
※とかなんとか言っといて、本作はVHSとレーザーディスクというフォーマットで発売された後パッケージ化されていないため、現状ではレンタル等で見ることは困難。映画専門チャンネルでの放映や上映会などのチャンスがあったら、Don’t miss it!
※今 YouTube で見れちゃうんだけど、これって言っていいのかしら?(笑)
※本作のレーザーディスクは我が家の家宝です!

【作品データ】
「ウンタマギルー」
公開 1989年
監督 高峰剛
(最新作に「変魚路(2016)」他、「オキナワン・ドリームショー(1975)」「パラダイス・ビュー(1985)」)
出演 小林薫、青山知加子、平良進、戸川純、ジョン・セイルズ、照屋林助、エディ、平良トミ、吉田妙子、他
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
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