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2016年06月10日

9冊目 「ガイドブック宮古南静園」

9冊目 「ガイドブック宮古南静園」

6月です。6月23日は、沖縄戦の戦闘が終結したとされる慰霊の日です。沖縄県では沖縄全戦没者追悼式が行われ正午に黙祷します。本土からも慰霊と平和への祈りを捧げたいと思います。
今月紹介する本は、『ガイドブック宮古南静園-南静園の隔離の歴史を歩く』です。慰霊の日の前日にあたりますが、6月22日は「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」です。奄美、沖縄、宮古にそれぞれハンセン病の療養施設があることをご存知でしょうか。
9冊目 「ガイドブック宮古南静園」
ハンセン病は、かつてはらい病とも言われ、皮膚と神経を侵す感染症ですが、通常の生活で感染することはほぼなく、今では治療法が確立され完治する病気です。古くから世界中で記録されている病で、病状の外見や感染に対する誤解から人々に恐れられてきました。

日本でも長い間患者の隔離が行われ、現在全国に13カ所の国立療養所があります。奄美には和光園、沖縄には愛楽園、宮古島には南静園があります。1907(明治40)年に法的な隔離が始まり、沖縄は九州(第五区)に加入し、当時の新聞には宮古から熊本に患者が送られたことが記されているそうです。その後、沖縄は第五区を脱退し、沖縄名護と宮古島に療養所を設置しました。

9冊目 「ガイドブック宮古南静園」「ガイドブック宮古南静園」は、ハンセン病と南静園の歴史、施設の紹介、入所者の証言などが掲載されています。南静園の敷地は広く、宿舎の他に、病院、美容室、教会、売店、図書室、ゲートボール場などがあります。これは、入所者が一生ここから出ることなく過ごすということを意味しています。

現在、入所者の平均年齢は84歳を超えているそうです。隔離の体験を語る人も少なくなっています。園の納骨堂には、今もどこにも帰れない遺骨が眠っています。強制的に堕胎された子どもたちの供養塔もあります。「一人でも子どもがいたら」「脱走してでも産ませることができなかったのは自分の弱さだ」と語る入所者の心を思うと胸が詰まります。ひとりひとりの人生がどのように奪われていたのか、それを乗り越えてきたのかを知らなくてはいけないと強く思いました。

「・・・多くの犠牲、そして社会の歪み、悲劇を過去のこととして風化させることなく、手渡しで語り継いでいくことは、二度と同じ過ちを許さない警鐘でもあり、教訓としても極めて重要な意味を持つものと思います。」
その願いにより、2015年3月に、人権啓発交流センター(宮古南静園ハンセン病歴史資料館)が開館しました。悲劇から何を学び、未来へむけて何を伝えればよいのか考えるきっかけになると思います。
「入所されている皆さんの穏やかな暮らしと、開館する人権啓発交流センター(宮古南静園ハンセン病歴史資料館)が人権・平和学習と交流の場となることを願います」
(引用)

9冊目 「ガイドブック宮古南静園」ちょうど今、沖縄愛楽園では、映像ジャーナリストの森口豁さんと彫刻家の金城実さんによる企画展「沖縄の傷痕-アメリカ世の記憶」(6月30日まで/場所:沖縄愛楽園交流会館/入場無料)が行われています。お近くの方はお運びください。

また、ハンセン病を扱った映画として、2015年公開の河瀬直美監督(原作・ドリアン助川)の映画『あん』もおすすめです。樹木希林さん演じる徳江さんの言葉を聞いてみてください。


〔書籍データ〕
ガイドブック宮古南静園-南静園の隔離の歴史を歩く
編集 / ガイドブック宮古南静園編集事務局
監修 / 国立療養所宮古南静園入園者自治会
発行者 / 国立療養所宮古南静園入園者自治会
印刷 / プラネット
発売日 / 2015年3日



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Posted by atalas at 12:00│Comments(0)島の本棚
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