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2018年12月14日

37冊目 「トロイメライ」

37冊目 「トロイメライ」

またまた登場しました!。お久しぶりです!。
半年に一度あらわれる、阿倍ナナメでございます。
ちょうど1年前。池上永一の『テンペスト』をご紹介させていただきました。相も変わらず、この阿部ナナメ。琉球王国の世界に惹かれておりまして、今回も池上永一の作品をチョイス。
『トロイメライ』をご紹介させていただきます。
こちら、一見、『テンペスト』とは関連のなさそうなタイトルなのですが、実は池上永一が描く琉球サーガ(散文物語)三部作と呼ばれるうちのひとつでして、舞台は『テンペスト』と同じ頃。なので多少はテンペストとリンクしたりしてます。
37冊目 「トロイメライ」
ここで少し、物語の舞台となった時代のおさらい。
ペリーの黒船来航、新撰組の設置、大政奉還、琉球処分といわゆる幕末のあたりです。
『テンペスト』では、首里城王宮の華やかな色鮮やかな世界が描かれておりましたが、『トロイメライ』では、城下の庶民たちの生活が描かれてます。

門中墓を盗まれた!。借金を踏み倒された!。親に売られた!。人を騙した!。門中墓には入れてやらない!。守礼之邦と呼ばれる琉球が守礼どころではない騒ぎです。

庶民の大騒ぎに申口方(もうしくちかた・財務以外を取り締まる役所)の平等所(ひらじょ・裁判所と警察の役割)が出てきたり、冊封使が絡み政務の長である三司官の属する評定所がでてきたり、薩摩や中国の間でドタバタしている王宮もてんやわんやです。

その頃の琉球は貧乏で厳しい生活のはずなのに、たくましい限りに楽しんでる。
おおらかに。
生も死も全てを包み、悲しみも喜びも受け入れて、たくましく。
なんて、しなやかなんだ。
役人のワガママを聞いてくれる料亭があって、役人がくすねてきたピーナッツと古酒で王だけが味わうことのできる高級料理のジーマミドーフを作る。役人だけで食すのではなく、誘い合って分けあって食べる。食通役人は心が広い(笑)。
生活苦で子どもを奉公に出す親。生きていくのに奉公と言う名の身売りをする子どもたち。理解しているものの、辛い未来。それでも前を向いて歩いていく。
人を恨まず環境のせいにせず、ただ前を向く。前を向かせるために振る舞われるフーチバージューシー。
野辺送りでは、サーターアンダギー、カマボコ、餅、三枚肉、昆布巻き、卵焼きが備えられて死者からのお裾分けだと、みんなで食べる。

どんなときでも分けあって。
あぁ。
沖縄だ。正しく、沖縄だ。

『テンペスト』では、「アララガマ」だと表現したけど、『トロイメライ』はなんだろ・・・。
「かなしゃがま」、かな。
人は愛しい。偉くなくても、お金がなくても、間違っても、正しくても。
まぁ、何が正しくて間違ってるかなんて、わからないけど。愛しい生を生きている。
生きるって、しなやかでないとな~っと漫然と思う。
根が張ってないと、しなやかになんて生れない。しなやかだから折れずに、踏ん張れる。
あれ?、「かなしゃがま」は、しなやか?ワケわからなくなってきた(笑)。

創作なんだけど、絶対あっただろうなという世界に虜にされてます。
やっぱり琉球王国が好きだ。
近いうちに、もうひとつも読破してやるぞとは心の内に・・・。

〔書籍データ〕
トロイメライ
著者 池上永一
発行 角川書店
発行日 2013年10月25日
ISBN 978-4-04-101039-6

◆阿部ナナメ紹介作品
 15冊目 「てぃんぬに 天の根 島に生きて」
 21冊目 「ぼくの沖縄〈復帰後〉史」
 27冊目 「テンペスト」
 33冊目 「カフーを待ちわびて」

◆池上永一作品の紹介
 27冊目 「テンペスト」
 28冊目 「ヒストリア」



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Posted by atalas at 12:00│Comments(0)島の本棚
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