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2015年12月11日

3冊目 「聞き書 沖縄の食事」/「おばあさんが伝える味」

3冊目 「聞き書 沖縄の食事」/「おばあさんが伝える味」

慌ただしい師走だけど、しわっすなよー(心配しないで)、という宮古ダジャレがあるのかは不明ですが、とにかく12月です。暴飲暴食になりがちな今月は、宮古の食について書かれた本を紹介したいと思います。

沖縄料理といえば、ゴーヤーチャンプルーや沖縄そば、最近ではポーク玉子やタコライスなどが有名だと思います。しかし、実は沖縄の食文化はもっと深くて多様で面白いことをご存知でしょうか。

「日本の食生活全集47 聞き書 沖縄の食事」
3冊目 「聞き書 沖縄の食事」/「おばあさんが伝える味」一般社団法人農山漁村文化協会が発行している、日本全国の都道府県+アイヌの食生活
を聞き書した全集の47番目、沖縄の食事です。

沖縄の食事の中でも、那覇の食・糸満の食・中頭の食・やんばるの食・宮古の食・八重山の食・与那国の食と分かれていて、料理名のほか、その土地の自然風土や産業、人々の暮らしや行事についても盛り沢山の内容となっています。

宮古の食の章では、おもに昭和初期の食生活についての聞き書きがされています。
宮古はやせた土地に台風や干ばつも多い風土だったそうで、芋の色々な食べ方、粟(ユニ)、黍(ウプギャム)、豆類をはじめ、宮古味噌から、やしがに(マクガン)にカタツムリ、蜂の子までも登場します。

基本的に「聞き書き」というスタイルを取っているので、各地域や家庭によっては「うちとは違う」と思う部分もあると思います。
聞き書きの良い所は、個人的な分とても詳細で具体的な記述になっていて、料理レシピにとどまらず、食事と人の生活との結びつきが鮮やかに感じられることです。

3冊目 「聞き書 沖縄の食事」/「おばあさんが伝える味」例えば、豆腐をつくる日には、近所の人におからを食べるか聞いてみるとか、葉もの野菜は女が屋敷の隅に植えて、冬瓜などの実ものは男の人が植えるとか。
女のお産で陣痛が始まると卵の入ったたて汁を食べさせるとか、にんにく漬けは、塩漬けは半年しか持たないが砂糖漬けは二年持つとか。
なるほどなるほど、とにかくすごい情報量なのです。
本書のはしがきに、こんな言葉がありました。

「ドウタガ ミャークヌムヌウ フォウトツコウクトカラ ノウグツマイバ パズマイドー」
 (私たちが宮古のものを食べて使うことから、何事も始まるよ)


もう1冊は、
「おばあさんが伝える味」
3冊目 「聞き書 沖縄の食事」/「おばあさんが伝える味」こちらは、那覇・首里・南部・中部・北部・離島・先島のカテゴリーで、総勢100名のおばあが、一人一品の料理と思い出を語っています。
1979年出版時点で、60~90代のおばあさんに聞いていますから、今となっては本当に貴重なお話です。

おばぁたちのレシピのラインナップを少しばかり挙げてみると、「ビラガラマチ」、「ティーポンポン」、「ンースエーイ」、「チーパァフジュネー」、「イラギムン」、「モーアーサゾーネ」…まるで呪文のような名前で想像がつかないけれど、興味しんしんです。

この本では、おばぁがその料理にまつわる“哲学”とも言える語りをしてくれます。 

「イラブー料理のおいしさはイラブーの選び方ひとつで決まる」
「イナムルチの味噌味は陶器、醤油味は漆器の茶碗を使う」
「寒い晩はでんぷんを多くしてトロ味を増すと温まる」


おばぁ、かっこいいよー!まさに経験に裏打ちされた説得力。
その料理の作り方や分量、手順も(ややあいまいに)語られていますが、いい塩梅で作るにはやはり修行が必要そうです。

それにしても、どれもこれもなんて手間のかかることでしょう。
宮古や沖縄料理の真髄は、珍しい食材ではなく、作る過程こそが価値を持つのだと思いました。食材を保存するため、美味しく食べるため、家族のためにどれほど手間と時間をかけてきたか、そんな愛情にあふれた食文化を伝えてくれる本でした。
ぜひ、実践あるのみ!まずは一品、誰かのために作ってみませんか。

[書籍データ]
日本の食生活全集47 聞き書 沖縄の食事
著者 : 「日本の食生活全集 沖縄」編集委員会
発売元 : 一般社団法人農山漁村文化協会
発売日 : 1988/4/25
ISBN 4-540-88007-1

おばあさんが伝える味 
著者 : 沖縄タイムス社編
発売元 : 沖縄タイムス社
発売日 : 1979/11/15

《第二金曜担当》 江戸之切子(えどのきりこ)
東京生まれ。東京在住。日々宮古島に想いを馳せながら、身近なみゃーく情報を集めています。



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Posted by atalas at 12:00│Comments(0)島の本棚
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