2017年11月10日
26冊目 「ウプシ 大神島生活誌」

文化の秋、スポーツの秋、読書の秋の11月です。
今月ご紹介する本は、大神島自治会発行の『ウプシ 大神島生活誌』です。
この本は今年の1月に発行されるや話題を呼び、新聞やネットニュースでも報じられ宮古島内のみでの販売にもかかわらず売り切れ続出となりました。

大神島は、宮古島の北の方に位置する0.24㎢(池間島の約12分の1だそう)の島で、現在の人口は30人(平成27年)です。大神島といえば、宮古一あるいは沖縄一の神高い神聖な島として知られています。島では秘祭である祖神祭(ウヤガン)が行われていて、また立ち入り禁止の聖域も多くあります。宮古の人でさえめったに行くことのない神秘の島という印象ではないでしょうか。
沖縄では島の信仰を守るために秘祭や聖域をもつ地域が多くありますが、大神島の人々もこれまではその実態についてあまり詳しく語ることはなかったと思います。なぜ今、この本が作られたのでしょうか。
この本を制作した経緯について、編集委員のしもじけいこさんは編集後記にこう書いています。
“この二十年の間に高齢化、過疎化がすすみ学校もなくなってしまった。住民がたくさんいて賑やかだった頃が懐かしく思い出される。”
“ウヤガンという祭祀のおかげで、民俗学者などから注目されてきた島。(中略)その後も多くの学者たちが島を訪れて言語や地層の調査なども行われているものの、島の暮らしを記録したものはない。高齢化がすすむ中で、今聞き取りをして残さないと…との思いから以前から一緒に島に通った比嘉豊光さんと、言語の研究者で大神方言調査をした仲間恵子さんの三人で「聞き取り」をスタートした。”

島の中で直接、自然に伝わっていったものが消滅する危機を感じ、研究者と島の人々が協力して残すことを決断したのでしょう。大神島からの大きな祈りが詰まっているように感じます。
“この本は調査報告書ではない。一家に一冊おいて子どもたちも読みやすいようにと心がけた。大神島の人たちが生きてきた歴史を子や孫、またその孫と次の世代の人たちに伝えて行く時の役に立てればうれしい。”
「ウプシ」とは、大神島の港の防波堤の横にある「大岩」のことです。船で大神島へ帰るときの目印だそうです。この先何十年後、何百年後に、大神島にかかわる人々にとって、帰るべき指標としてのウプシになることと思います。
〔書籍データ〕
ウプシ 大神島生活誌
編集 /「ウプシ 大神島生活誌 編集委員会」
発行/ 大神島自治会
発売日 /2017年1月28日
※宮古島市内の書店などで販売しています(2017年11月現在)。
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
│島の本棚