2016年05月27日
其の1 それは、重度の宮古病から始まった-ゲンタさんの音楽島構想-

第4金曜『宮古かいまいくいまい』担当きくちです。2か月ぶりのお久しぶりでございます。今月からシーズン2ということで、えっと、何が違うかといえば、何も違いません。すみません。シーズン1同様、宮古で出会って聞いた「へぇ~」ってお話しを、ゆるくご紹介できればと思います。あえて言うなら、シーズン2では、宮古に移住されたヤマト人や、現在は遠方在住という宮古人、または宮古にUターンという方々からも、宮古ゆかりのお話を伺い、「へぇ~」とか「ほぉ~」とかしたいなと思っております。
というわけで、シーズン2もよろしくお願いします!

まさに今日、5月27日から3日間、宮古島はある種、異常な熱気に包まれる。街を歩けば、観光客とも島の住民とも明らかに違うオーラをまとった人々と出会うこともある。来月に予定されるロックフェスと並び、宮古の二大音楽イベントとなる『宮古島ミュージックコンベンション』が開催されるのだ。
【宮古島ミュージックコンベンションOfficial Siteへは下のバナーをClick】

主催するのは、江川ゲンタさん。日本の音楽シーンを代表するドラマー、パーカッショニストとして、オルケスタ・デラ・ルスやビンゴ・ボンゴなどラテン系バンドで活躍。さらに、数多くのアーティストのライブやレコーディングに参加しているミュージシャンだ。
そのゲンタさんが初めて宮古を訪れたのは13年前の夏。
滞在わずか一週間で、彼の人生が変わった。
空港から砂山ビーチに直行すると、夕陽が海に落ちる瞬間だった。
夕陽から金色の道が、まっすぐに俺を目指している。まるで俺だけに向かって。
身動きもできないほど感動していたら、誰かが「虹!」っていうじゃない。
で、後ろを振り向いたらダブルレインボウが、まるで生えてた!
ラテン音楽を中心にプレイしていたゲンタさんは、南米をはじめとして、世界中の海を楽しんできた。美しいといわれる海は知り尽くしているつもりだったが、宮古島初日の砂山ビーチでの体験は、あまりに衝撃だったという。
以来、一週間砂山ビーチに通い続けるのだが、最終日は前浜で仕事が待っていた。
まあ、ぶっとんだね。
ピーカンの青い空、青い海、目もあけられないくらいまぶしい、真っ白の砂浜。
誰もいないビーチをひとり歩いている自分は、ムービースターかと。
砂山ビーチですっかり鎧がはずれ、心の柔らかい部分がむき出しになったゲンタさんは、前浜ビーチでとどめを刺されることになる。
島の人から借りたコンガのことで、相談したいことがあって、
直接本人と話してくれと、いきなり携帯を渡された。
そのとき、「ありがとうって言ってね」と。
その瞬間、今まで東京で積み上げてきたミュージシャンとしてのね(笑)。
何かが、がらがらっと崩れた。
おぜん立ては、スタッフがしてくれるのが当たり前で、
ましてや人に礼を言うなんて、これまでの自分の世界ではありえないことだったから。
それがめちゃくちゃ新鮮だった。
人間関係はそうあるべきだなと、ものすごくなんかこう、ストンと。
島からの強烈なメッセージを抱えたまま帰京したゲンタさんだが、その幻影は彼を捉えて離さない。宮古を想い、ため息ばかりつく日々が続いた。まるで恋に落ちたみたいだったとゲンタさんはいう。もう重度の宮古病である。そして秋に再来島し、宮古島で音楽をというゲンタさんの想いが定まる。
翌年にはミュージックコンベンション第一回目の開催。大掛かりなイベントを、わずか数か月で実現してしまったのだ。以来、ゲンタさんの人生は、どんどん宮古島を中心に周りはじめ、2年前には、とうとう島の住民になった。
【撮影協力:宮古島 Big Chief】

仲間が、宮古島で暮らすことを夢見ながら、かなわず死んでしまった。
最期はずっと宮古島の本を見てたと、奥さんがいうんだよね。
それで移住する決心がついた。
よく人は、いつかやりたい。そのうち行きたいと口にする。しかし、そんないつかや、そのうちなんて、きやしないんだとゲンタさんはいう。住んでおけばよかったなんて、後から思うのは嫌だなと。
ミュージシャンとして全国を飛び回る生活と、島の暮らしの両立。その大変さは、きっと想像を超える。それでもここには、都会では絶対に手に入らない贅沢があると、ゲンタさんは思う。それは海や空の自然現象であり、そこから生まれる音楽であり、インスピレーションであり、そして「ありがとうって言ってね」に象徴される人とのつながりだ。
本格的なレコーディングスタジオを作りたい。
ミュージシャンが、レコーディングのために宮古に来て
宮古で生まれた音がCDになって、広がっていく。
そして、そのCDを手に取った人はみんな宮古とつながる。
1枚のCDが人と宮古をつなぐ。ゲンタさんは、そんな活動をこれから展開していきたいと考えている。宮古島の魅力が、多くのミュージシャンたちにより、音になって拡散される。その音に触れた人は、それが生まれた場所に想いを馳せ、身を置きたいと感じる。自然と音楽が一体になったような、宮古ならではの音楽島。その実現は、きっとそう遠いことではない。
※ ※ ※ ※ ※
【あとがき】

一部重複しますが、そこに載せきれない内容を、ご本人の許可を得た上でまとめました。本文では、たいがい私的な感想、感情を入れないようにしているので、あとがきとして、ちょっと。
実は、最初、少し怖かったんです(笑)。つまんない質問とかすると怒られそうで・・・。実際は終始穏やかでにこやかで、とても親切にお話ししていただけたのですが。
特に印象深かったのは、前浜でのエピソードでした。「ありがとうと言ってね」と、その言葉に、ゲンタさんはとても心を動かされるわけです。17歳でプロデビューして以来、第一線のミュージシャンとして、周囲からちやほやされることに慣れたゲンタさんにとっては、確かにね。びっくりでしょうね。
でも、その後の数か月で、ミュージックコンベンションの第一回目を開催してしまう。たくさんの人々を巻き込み、掛け合い、お願いして、というそれまでのゲンタさんの人生になかったであろう、地道で基本的な人と人との関係の紡ぎ方を、ストンと瞬時に会得したその柔らかさは、すごいと思ったのです。
とても多忙なゲンタさんにダメ元で、写真撮影に海までいきませんか?と訪ねてみると、いいよ!と気安く応じてくださいました。ありがとうございました。
(きくちえつこ)
レターペーパー 『手×紙』
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「宮古島ミュージックコンベンション2016」
日時 2016年5月27日・28日・29日
場所 昼の部:トゥリバー特設会場
夜の部:平良市内各所
(20160527 now)
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
│宮古かいまいくいまい2