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2016年05月06日

Vol.3 「テッポウユリとグラジオラス」

Vol.3 「テッポウユリとグラジオラス」

爽やかな青空が続いたかと思えば、湿気を含んだ風が吹き、梅雨が近いことを実感する頃、宮古のうまかまで、真っ白なテッポウユリが見られる。また、グラジオラスも赤い花を咲かせ目に留まる。
Vol.3 「テッポウユリとグラジオラス」
新学期が始まり、学校や新しいクラスにも慣れてきた5月、先生による家庭訪問があった。
最近は家庭訪問をする学校も減ってきているらしいが、昭和40年代、家庭訪問は親にとっても、子にとってもソワソワするものであった。親は、家の片づけ、そうじをしなくちゃ!子は、自分の家に来てもらうのがうれしいやら恥ずかしいやら。

わが家は小学校から4キロも離れていて、当時、車で来る先生はいず、みんな自転車か歩きだった。
歩きながら、汗をふきふき、先に終えた生徒に連れられてわが家にやってくる先生。
母は普段よりもいい洋服を着て、お茶、お菓子をせっせと出すのだった。
たぶん、私の学校の様子などは、先生を迎える緊張であまり覚えていなかったはず。

Vol.3 「テッポウユリとグラジオラス」話が終わると、私は先生をバス亭まで見送るのが常だった(学校から遠いわが家は、いつもその日の家庭訪問の最後だった)。
地元の下地線を通るバスよりも、上野線が近いので(と言ってもバス乗り場まで約1キロ)、そこまで案内をする。
点在する家と、山と畑ばかりの道のり。私は先生と二人歩くのがとても照れくさかった。
キビ刈りが終わった畑には、新しいキビの葉が子どもの腰くらいまで伸び、青々としている。
その畑の中には赤いグラジオラス。隣の山には、テッポウユリの白い花がたくさん咲き乱れていた。
そう、この時季の宮古には野生のテッポウユリとグラジオラスが畑や山に咲くのだった。
Vol.3 「テッポウユリとグラジオラス」私は、テッポウユリとグラジオラスをめがけて、一目散に走り、両方たくさん採ってきた。
遠くまで来てくれた先生に何かあげたかったのだろう。
先生に手渡した。
先生はそれを持ち、バスに乗って帰っていった。

テッポウユリとグラジオラスを見ると、もう何十年も前のことだが、色鮮やかにこの時のことが蘇る。今は畑や山だけでなく、庭や道端でも多く見られ、心和んでいる。
テッポウユリというと、東平安名崎が有名で今年もたくさん花を咲かせているそう。

咲き終わる頃に、宮古はそろそろ梅雨入りとなる。

松谷 初美(まつたに はつみ)
1960年生 下地高千穂出身
2001年より、宮古島方言マガジン「くまから・かまから」主宰
30年住んでいた東京から昨年Uターン。現在下地に住んでいる。
毎日が新鮮。宮古の魅力を再発見中。



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