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2018年07月27日

Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」

Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」

内地では、気温が40度越えも出るという異常気象の夏。宮古は暑いとはいえ、平均気温は32~3度。ここ数年「宮古に避暑に行かなくては」と内地に住んでいる友人たちは言う。
過ごしやすくなるのを願うばかりだ。
Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」
子どもの頃(昭和30年代から40年代)、この時季、我が家には、んきゃふ(海ぶどう、和名:クビレズタ)がたくさんあった。父がまいぬいん(前の海:川満の海のことをそう呼んだ。与那覇湾の一部)から採ってきたものだ。ふぁっふぁい(肥料)袋の数袋に入れられ水タンクの横に並んでいた。

んきゃふは、海水と淡水が混ざるところで育つらしい。まいぬいんはまさにそうで、海に淡水が流れている場所がたくさんある。そこには、んきゃふだけでなく、ワタリガニやアイゴもたくさんとれた。んきゃふは粒が大きく、ひとつの茎にズラーっと並んでいた。地元では川満と入江(編注:入江湾)の海で採れ、夏になると父はせっせと通った。
んきゃふは、冷蔵庫に入れたり、洗ったりするとしなってしまうので、袋の中から食べる分だけを取り、傷んだ部分などをきれいにする(つぶつぶの部分だけでなく、茎も食べるので茎付き)。まいぬいんは泥海のため何回も洗わなければいけないが、時々小さなカニが付いていて驚くこともあった。
Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」
んきゃふの我が家の食べ方は、大皿にどっさりと乗せ、鯖缶に水、砂糖、酢、醤油を入れたタレで食べるのが定番だった。が、実は子どもの頃は、美味しいと思ったことはなかった。味はしないし、ヌルっとしているし、大人は何が美味しくてこんなにワシワシ食べるのだろうと思っていた。大人になって判る味というのがあるが(私の場合、ごうら≒苦瓜も)、んきゃふもそうだった。

それにしても、んきゃふが「海ぶどう」という名前で呼ばれるようになり、観光客や内地でも食べられるようになるとは思いもしなかった。テレビで「ちゅらさん」が放送されたからだろうか。内地の沖縄料理の店のメニューで見るようになった。注文してみると、小さいサラに盛られ600円…。びっくりしたのを覚えている。今や、養殖が盛んで、いつでも食べられるようになった。

んきゃふの味が判るようになり、帰省した時は、天然のんきゃふが食べたいと父にお願いをしていたが、数年前から天然のんきゃふは採れなくなったと言う。10年くらい前まで父は張り切って取りに行っていたが、その量はだんだんと減ってきていたようだ。
Vol.27 「んきゃふ(海ぶどう)」
時々考える。
んきゃふやカニが豊富にとれた頃は、それは当たり前で特に海に感謝して食べるということもしなかった(私の場合ね)。それが豊かなことだったと知ったのは無くなってからだ。何も感じず豊かな海の恩恵が受けられた時が幸せだったのか。気づいた今が幸せなのか。

無くなってしまった原因は判らないが(気象の変化、自然汚染、島に木々が少なくなっているせい?)、「まいぬいん」を見ながら、いつかまた昔のような豊かな海になってほしいと願っている。

松谷 初美(まつたに はつみ)
1960年生 下地高千穂出身
2001年より、宮古島方言マガジン「くまから・かまから」主宰
30年住んでいた東京から昨年Uターン。現在下地に住んでいる。
毎日が新鮮。宮古の魅力を再発見中。

宮古島方言メールマガジン『くまから・かまから』
http://km22.web.fc2.com/



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