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2017年05月26日

その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」

その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」

宮古島市教育委員会から先月リリースされた冊子【宮古島市neo歴史文化ロード綾道 伊良部島コース】が評判になっている。綾道は文化財の紹介を中心に、地域の歴史や文化をわかりやすく読み解いたガイドブックで、友利・砂川(ともり・うるか)コース、平良(ひらら)北コース、下地・来間(しもじ・くりま)コース、宮国・新里(みやぐに・しんざと)コース、戦跡遺跡編に次いで、今回が6冊目の発刊となる。イラストを描いているのは山田光さん。ユーモラスでどこか人懐こい彼女の作風は、宮古島の空気感を見事にとらえ、ページを開けば、もう、森の匂いが立ち上り、人々の掛け声やら波の音やらが飛び出してきそうなのだ。
その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」
文化財を紹介する本はすでにあるのだけど、専門用語が多すぎて難しい。もっと子どもから大人まで、宮古に初めて来る人にもわかるようなものにしよう、と担当職員と意見が一致。例えば砂川のウイピャ-ムトゥの斎場。そこでは「ナーパイ」という祭祀が行われる。じゃ、ナーパイって何?津波?その津波っていつあったの?とかね。そういう背景も掘り下げて説明しないと面白くないし意味がない。

自然や探検が大好きな光さんの視点は、机上の調べものに終わらない。必要とあらば、いや、なくとも、滅多に人が入らないアブ(洞穴)に潜入し、崖を下り、入り江を歩き、海に潜る。少年のような身体能力をフルに発揮し、〝現場検証″を重ねてイラストにする。

地元の人は地元のことを意外に知らないし、こんなこと調べてどうするの?って目でみるけれど、カタチになると、一番喜ぶのはやっぱり地元の人。こんなこと知らんかったよ。あんたは宮古の人より知ってるさいがって言われてます(笑)
その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」
光さんは城辺の農家の嫁として、2006年に愛知県からやってきた。ふたりの出会いは名古屋のとある沖縄料理店の開店準備の現場。光さんが看板を描いていたとき、内装職人にいきなり「もしかして山田さんって言います?」と聞かれ、のけぞったそうだ。

実は、妹が宮古の農園でバイトしたことがあって、たまたまそこは親戚の農園で一緒に働いていたと。妹と私はそっくりだから、これは話に聞いていた姉に違いないと思ったらしい(笑)

この広い世の中で、たまたま妹がバイト先で出会った宮古の青年と、たまたま姉が看板を描いた店での出会い。これを運命と呼ばずして何とする。持っていきようによってはロマンチックな一大ラブストーリーなのだが、光さんを通すと、なぜだか大爆笑の物語に。

内地から嫁に来てくれたとすごく歓迎された。でも、酔った勢いで「ナイチャーは好きになれない」と言われることもある。でも、それは今までの歴史を考えれば、当然のことだよね。

実は光さん、かなり個性的な家庭に生まれて育った。両親は社会問題に並々ならぬ関心を寄せ、子どもたちには学校より勉強会や養護学校などへの訪問、支援するNGOの活動を優先させたという。家族の会話には日常的に「沖縄」という言葉が飛び交い、幼い頃から沖縄の人たちと関わることも多かった。沖縄へ向けるまなざしは、いつも真摯なものにならざるを得なかった。そして、結婚は、その沖縄の「中の人」になることを意味してもいた。

その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」憧れから来たわけじゃないから、いわゆる期待していたのと違ったという思いはない。内地では「自分はこう思う」と率直に言ってたけど、島に来てからは控えている。狭い島では「言い逃げ、ケンカ別れ」は極力しない方がいい。ほぼすべての人がつながっている、もしくはそのうちつながるので、関係を悪くしてしまうといろいろとうまくいかない。そういうことが数年経ってわかってきた。最初はそのあたりがよくわからず、場を重くしたことも。なので、内地での経験はひとまず横に置いてある感じ。

山田家では、みなが思うことを言い合った。茶の間がディベートの場と化した。ここでもそれをしたら「まあ大変なことになりましたよ」と光さんは笑う。そう。彼女はどんな局面も豪快に笑い飛ばし、楽しんでしまう才能の持ち主だ。それは、たぶん持って生まれた性格に加え、神戸の震災以来、取り組んできたという災害支援活動から得た生きる知恵だ。

災害があれば、泊まり込みでどこへでも出かけた。炊き出しだって200人、300人単位だから、こっちの集まりで数十人分はぜんぜん余裕。被災地にはいろんな人がいて、トラブルも日常茶飯事だし、どんな場面にも対応できないといけない。だから大抵のことは負担にもならない。すべてが面白いと思えるよね。

その10 「島の地図、塗り替えてます!? 光さんの綾道(あやんつ)」絵を描くこと、旅をすること、災害支援、そして沖縄。向き合ってきたテーマのすべてが、島に暮らし、島を調べて描くことに集約されると光さんはいう。被災地で感じることは地域のつながりの大切さだ。部落の集会や行事に参加し、人と人がつながること。そして綾道の制作を通し、地元のいろいろを掘り起こすこと。新しい発見にみんなで「へぇ〜!」と言い合うこと。そんな毎日が「スゲー楽しい」のだと。

しばらく前から、集落の要所に光さんの描く綾道マップが案内板として設置されている。光さんのイラストが島の景色の一部となる。なんて素敵な仕事なのだろう。考えただけでスゲー楽しいじゃないか。

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【あとがき】
山田光はカッコいいのです。三線も弾きこなし、オートバイを乗り回し、なんなら船でも飛行機でも操縦しそうな感じ、といったら伝わるでしょうか。そして絵がうまい。当たり前か。山田光という圧倒的な個性のルーツは、やはり個性的な家庭環境にあるのだと、話を聞いて納得しました。
そして「綾道」ですが、伊良部島編に続く今年度は、「平良南・久松コース」が計画されています。また、以降の計画は「城辺」、「上野」、「池間・狩俣・大神」(いずれも仮称)と予定されています。
きくちえつこ 

※「綾道」の入手方法については、発行元の宮古島市教育委員会文化財課(城辺庁舎)までお問い合わせください。
宮古島市neo歴史文化ロード宮古島市教育委員会公認アプリ



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