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2018年06月08日

33冊目 「カフーを待ちわびて」

33冊目 「カフーを待ちわびて」

お久しぶりです。
阿部ナナメです。 (編注:島の本棚には半年毎に顔を出しており、今回が通算4度目)
今回は原田マハさんの『カフーを待ちわびて』をチョイスしてみました。
33冊目 「カフーを待ちわびて」
なんちゃら大賞と名が付くものを、あまり読んでいなくて去年の夏ごろからあえて選んでいて出会いました。ちなみにこれは第一回日本ラブストーリー大賞でした。
文庫本の発行が2008年。10年も原田マハ作品を読まなかったことを後悔。

なぜ読まなかったかというと、作者名の『マハ』なんですよね。マハと聞いて、自由奔放な物語を書く人なのかと思ってました。マハですよ?マハ。マハと聞いたらイタリア男の女性バージョンって感じじゃないですか。明るく奔放で自由で心の動きとか読めなさそうで。どうしてもジローラモが浮かんじゃう。小説もチャラそうだしね。
そんな感じで遠くにおいてた原田マハさん。

『カフーを待ちわびて』
カフーって、いやもう沖縄が舞台じゃん。
読むしかないよね。と初めましての原田マハ作品を読了。

ちくしょう。いい感じに裏切られた。

奔放さの欠片はなく、慎重に慎重に。心の赴くままではなく気づかって気づかって。心が動くさまが伝わる表現。
そうやって書かれた物語は、臆病な島の青年と黒いラブラドールのカフーとの日常から始まる。青年が営む祖母から引き継いだ商店。カフーの首に下がる貝殻の音。家の裏のユタのおばあ。カフーと遊ぶ白浜のビーチ。親指以外はひとつになった右手。デイゴの小枝。居なくなった母親。ユタのおばあの『カフーは来たかね?』。ある日届いた手紙の差出人『幸』。いちいち切り取れる場面。
キューって感じではなく、ふわぁとした感じ。どう言えば伝わるかなこれ。穏やか?暖かい?まあるい?とにかく、色と雰囲気が伝わる。ふわぁとね。
イタリア感は全くなかった。

ちくしょう。飛行機の通路側で読むんじゃなかった。

『カフーアラシミソーリ』と大切な人を思い口にする言葉が、グッと胸に来る。
苦しくて苦しくてどうしようもないのに、自分以外のために『カフーがありますように』と紡ぐ、優しい物語だった。

ラブストーリー大賞、なるほどね。原田マハすごいわ。勝手にチャラそうなんて思ってすみません。もうすぐ46才になるおばさんの、涙腺を久々に刺激した作品でした。また言いますが、原田マハすごいわ。

〔書籍データ〕
カフーを待ちわびて
著者 /原田マハ
発行/宝島社文庫
発売日 / 2008年5月12日(文庫) 2006年3月20日(上製本)
ISBN /978-4-79666-352-6(文庫) 978-4-7966-5212-4(上製本)


【阿部ナナメ@島の本棚】
15冊目 「てぃんぬに 天の根 島に生きて」(2016年12月09日)
21冊目 「ぼくの沖縄〈復帰後〉史」(2017年06月09日)
27冊目 「テンペスト」(2017年12月08日)

【原田マハ】
18冊目 「太陽の棘」(紹介者:江戸之切子)



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Posted by atalas at 12:00│Comments(0)島の本棚
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