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2017年12月08日

27冊目 「テンペスト」

27冊目 「テンペスト」

基本的に歴史なんて明治維新の高杉晋作くらいしか興味はありません。司馬遼太郎も特に読んでもいません。徳川将軍15代も言えません。でも琉球王国に惹かれる阿部ナナメです。
27冊目 「テンペスト」
今回、何年かぶりに『テンペスト』を読み直したので紹介させていただきます。
『テンペスト』は石垣島出身の池上永一さんが2007年1月から2008年6月にかけて発表した時代小説です。舞台化、テレビドラマ化、映画化されるなど人気のあった小説なので、みなさん読んだことあるか名前だけは知ってる方が多いと思いますが、最近のマイブームが琉球王国なので個人的意見を加えつつ紹介したいと思います。

物語は歴史でいうとペリーの黒船来航、新撰組設置、大政奉還、琉球処分と、いわゆる幕末のあたりが舞台です。琉球にとっての運命の子が誕生するところから始まり、運命の子を通して、当時の琉球の文化と歴史が生き生きと書かれていきます。あぁもうフィクションだなんて、信じられない。半分本当で半分創作ってステキです。妄想に拍車がかかります。

その当時、琉球王国では本場中国の科挙(かきょ)よりも難しいと言われた科試(こうし)がありました。科試のいくつかの段階を経て最終的に受かると王宮で働くことができるのですが、最終合格するには600倍の倍率を戦うとかなんとか。士族であることが受験資格だったようですが、なかなか受からず科試浪人がいたようです。科挙試験内容は教養、知識はもちろん道徳的な内容や外国語。そんな科試を13歳で突破するのが運命の子。突破のみならず、ガンガン出世するのです。最終的には表十五人衆と呼ばれる官僚(今でいう大臣)にまで上り詰めます。

琉球の歴史がリアルに書かれているからこそ、興味深い内容に出会いました。物語の中では薩摩からの支配を受けつつ中国の冊封体制の中。貿易での利益は薩摩へ取り上げられ、中国へのもてなしでお金もなく、江戸上りでさらに貧乏まっしぐらの琉球は、宮古と八重山に人頭税を取り入れていました。
そう。悪名高い人頭税がここで出てきました。え?貧乏じゃなかったら人頭税もなかったのかー。と言うことは、遡って豊臣秀吉の朝鮮征伐とか徳川家康が幕府を開くとかそのあたりには、琉球はどうだったの?。いや、『テンペスト』の舞台である時代の終わりの琉球処分の辺りは?。いやいやなんだか、ひたすらに侵略されてばかりじゃないですか。国として名乗るために王国として存在するために、冊封体制を取ったものの結構な辛い時代ですよね。宮古と八重山だけでなく琉球が辛い時代であったにも関わらず、琉球文化が花開くのもこの時代。学問に教育、芸能に伝統工芸や文学。中国や朝鮮、交易先の東南アジア、そして日本からの影響を受けて琉球としての文化になっていく。
強い。強いなぁ。アララガマですよ。まさしく。

運命の子は順風満帆に生きてきたわけではなく、やはり運命の子らしく波瀾万丈の人生を送ります。何度も心が折れそうになります。そのたびに立ちあがる。
ステキです。
もうこれ以上書くと、ネタバレをおこしそうです。

半分本当で半分創作と書きましたが、あたしの知る琉球の歴史に被るので、歴史的流れは本当だと信じてこう書きました。登場人物にそれらしい人はいないので、半分本当で半分創作だと個人的に信じています。
日本史もたぶん面白いとは思いますが、『テンペスト』を入り口に地元、琉球史も楽しんでみてはいかがですか。
あたしは未だ見たことのない映像の『テンペスト』を見てみたいなぁと思います。
GACKTがドはまりな役だったらしいので…。

〔書籍データ〕
テンペスト(文庫版)
著者 池上永一
発行 角川書店
発行日
 春雷 2010年8月25日
 夏雲 2010年9月25日
 秋雨 2010年10月25日
 冬虹 2010年11月25日
ISBN
 春雷 ISBN 978-4-04-364711-8
 夏雲 ISBN 978-4-04-364712-5
 秋雨 ISBN 978-4-04-364713-2
 冬虹 ISBN 978-4-04-364714-9


【阿部ナナメ@島の本棚】
15冊目 「てぃんぬに 天の根 島に生きて」(2016年12月09日)
21冊目 「ぼくの沖縄〈復帰後〉史」(2017年06月09日)



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Posted by atalas at 12:00│Comments(0)島の本棚
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