2015年09月08日
第47回 「世界水フォーラム出場記念碑」
水の勢いのごとくとうとうと続くこの流れはどこまで行くのでしょうか、今週も「水」シリーズで進めてみたいと思います。
早速、今回紹介する石碑ですが、2003(平成15)年に日本(京都・滋賀・大阪)で開催された「第3回世界水フォーラム」に、沖縄県立宮古農林高等学校(当時)の環境工学科環境班が参加したことを記念したものです。
石碑は2008年に沖縄県立翔南高等学校と統合して、沖縄県立宮古総合実業高等学校となった旧農林高校の正門近くにある、円柱型の図書館脇に建立されています。
そしてこの翌年、彼ら宮古農林高等学校環境工学科環境班は、とてつもないことをやってのけるのです。島を、沖縄を、日本を代表して世界の頂点に立ったのです。
彼らは「ストックホルム青少年水大賞 国際コンテスト」において大賞(グランプリ)を受賞するのでした。
まずは、彼らが受賞した「ストックホルム青少年水大賞」とはいったいどういうものなのかということを、備忘録も兼ねて少し紐解いてみたいと思います。
毎年8月に、スウェーデンの首都・ストックホルムで、世界中から水環境の研究者が一堂に会するストックホルム世界水週間において、ストックホルム水大賞(ストックホルム国際水協会が選出)が選出されます。
これは「水のノーベル賞」とも呼ばれており、ノーベル賞と同じようにスウェーデン国王から授与される格式のある賞で、彼らが受賞したのはそのジュニア版である「ストックホルム青少年水大賞」といい、大賞同様に優れたプロジェクト(調査研究)を行った若い研究者に贈られるものなのです。
受賞した研究内容は「宮古の水を守れ~土壌蓄積リンで環境に優しい有機肥料作り~」というもの。
内容はやや専門的な文言が多いので意訳してみると、琉球石灰岩で出来た宮古島の唯一の水源である地下水は、年々硝酸態チッソの量が増加しており、飲料水基準値の危険値に近づいている危機的状況にありました。
宮古農林高校環境班の研究は、農業で使われている化学肥料の量を減らすため、サトウキビ製糖工場の廃棄物として出るバガスや糖蜜から堆肥を作り、これにバガスから製造した粉炭を加えて、農業者が使い易いペレット状に成型した有機堆肥の製造します。
そしてこの有機堆肥を施肥することで地下水中の硝酸態チッソの濃度を低減させる実験に成功しました。
悪戦苦闘しながら地域の人々とも協力し、原因追及だけにとどまらず地元の材料を使って実際的の問題解決を目指し、地下水汚染対策への普及の可能性や、地域資源の循環を通した持続的な農業を追及する姿勢が高い評価を得て、アジアで、日本で初めてのストックホルム青少年水大賞を受賞したのです。
当時受賞した宮古農林高校の沿革についても少し触れておきましょう。
1946(昭和21)年4月1日、宮古群島政府立宮古中学校に農科として併設される。
1947(昭和22)年に宮古群島政府立宮古高等学校農林部となる。
1948(昭和23)年の学制改革に伴い宮古農林高等学校改称。
1952(昭和27)年、琉球政府へ移管され琉球政府立宮古農林高等学校となる(共学化)。
1972(昭和47)年5月15日、本土復帰に伴い、沖縄県立宮古農林高等学校に改称。
2008(平成20)年、宮古翔南高等学校と統合され、沖縄県立宮古総合実業高校が発足。
2010(平成22)年3月2日、最後の生徒が卒業して農林高校は閉校。
2008年の合併によって宮古総合実業高校となりましたが、統合相手の翔南(水産)高校の沿革を見ると、とても面白いことが判りました。
1946(昭和21)年4月1日、宮古群島政府立宮古中学校に海洋科として併設される。
1947(昭和22)年に宮古群島政府立宮古高等学校海洋部となる。
1948(昭和23)年の学制改革に伴い、宮古水産高等学校として独立。
1952(昭和27)年、琉球政府へ移管され琉球政府立宮古水産高等学校となる。
1972(昭和47)年5月15日、本土復帰に伴い、沖縄県立宮古水産高等学校に改称。
1992(平成4)年、宮古高等学校から商業科が移設され、校名を翔南高等学校に改称。
2008(平成20)年、宮古農林高等学校と統合され宮古総合実業高校が発足。
2010(平成22)年3月2日、最後の生徒が卒業して翔南高校は閉校。
宮古高校から商業科が移設され水産高校から翔南高校に改称した以外、2校はまったく同じ流れをたどっており、文字通りの姉妹校(スール)といえるかもしれません。
しかしながら、ひとつとなった宮古総合実業高校は2013年度に学科再編が行われ、残念ながら環境工学科の名前は消えてしまいました(再編後は、食と環境科環境クリエイトコースという名前となっている)。
※沿革に出てくる宮古中学校は、現在の宮古高校のことです。
【資料】
「第3回世界水フォーラム」/日本水フォーラム
日本ストックホルム青少年水大賞(国内選考機関)
「宮古の水を守れ~土壌蓄積リンで環境に優しい有機肥料作り~」
大賞を受賞した研究報告レポート(PDF)
第8回ストックホルム青少年水大賞グランプリ(大賞)を受賞した、
宮古農林高校一行のストックフォルム紀行(写真レポート)※オススメ!
SIWIストックホルム国際水協会(英語サイト)
沖縄県立宮古総合実業高校(HP)
Posted by atalas at 12:00│Comments(0)
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