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2018年11月09日

1本目 「ホテル・ハイビスカス」

1本目 「ホテル・ハイビスカス」

東西東西(とざいとーざい)~!。
本日、皆々さま方にご高覧いただきまするは、オキナワ・宮古に関するさまざまな本をご紹介しております、ATALAS Blog 金曜特集名物「島の本棚」に、新たに登場いたしまする別館「シネマ de ミャーク」でございます。
筆を振るうライターは、沖縄好きにして映画愛好家としても名高い、久保喜広(くぼよしひろ)氏でござます。やあやあやあ!。さすれば「シネマ de ミャーク」、開幕でございます。遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!。


1本目 「ホテル・ハイビスカス」私は東京在住ですが、宮古との付き合いはかなり長く、初めて宮古に来たのは30年以上前。まだ来間大橋もない頃でした。それ以降ほぼ毎夏訪れ、ここ5年は夏は宮古で働きながら暮らしているという、宮古はまさに第二の故郷という宮古大好き人間です。よろしくお願いします。

さて、沖縄に関連する素敵な映画をご紹介していく「シネマ de ミャーク」。第1回は私の心の映画でもある「ホテル・ハイビスカス」をご紹介したいと思います。

この映画ができたのは2002年。この頃の私は、ただ「きれいな海」が好きで「沖縄」が好きと言っていた、よくいる観光客。そんな私に、沖縄の全てをまるっと教えてくれたのがこの映画でした。

まず、ものすごいインパクトで見るものを圧倒するのが、主人公の女の子「美恵子」。まるで「沖縄」そのものを体現しているかのような天真爛漫でパワーに満ち溢れたキャラクターに心を鷲掴みにされます。その美恵子が子分の男子を引き連れて、キジムナーを探す旅に出るところから物語は始まります。

いじめっ子に叫んだ「死なす!」って言葉は、当時全くうちなーぐちを知らなかった私にはインパクト絶大だったのを覚えています。内地なら「ぶっとばす」とか「ぶっ殺す」とか言うところでしょうが「死なす」とは言いません。言葉がちょっと違うだけで妙に新鮮で、この小学生が言う「死なす!」というセリフが印象的だったのをよく覚えています。この美恵子役の子役 蔵下穂波の天然の魅力がでーじすごい!

また、この「ホテル・ハイビスカス」に暮らす一家のインターナショナルさが、沖縄のチャンプルーさを表していてすごい。長男は黒人とのハーフ、長女は白人とのハーフ、末っ子の美恵子だけが今のお父さんの実の子で、お母さんは同じでも全員お父さんが違うというバラエティに富んだ家族構成。そしてそれを問題として捉えるのではなく、全てを許し、全てを受け止め、家族として仲良く暮らしている。そう、この家族こそが「沖縄」なのです。

捨てた息子に一目でも会いたいと手紙を寄こす米兵。自分を捨てた父を許せない長男ケンジと、声をかけながら米兵の父が並走するシーンで、その間にあるフェンスが沖縄の抱える問題を表しているのは秀逸。そして、その息子「ケンジにいにい」を演じているのが、今のEXILEのネスミスだったりするからビックリです!

「家族」を通して沖縄の「今」を描く一方で、キジムナーを探して旅に出たり、沖縄の「スピリチュアル」な部分も紹介してくれます。特に、ラストのエピソードで描かれる沖縄の「お盆」というのも、内地で暮らす人間には本当に新鮮。家族全員でご先祖様をお迎えするウンケーから、ウチカビを焚いてお送りするウークイまで、内地のそれとは本気度が全然違う。最初、小学生の美恵子は「お盆」のことを信じられずにウンケーの席で暴れてしまい家出をしてしまいます。

ご先祖さまとの出会い、マブイ落ち、トイレの神、マブイ込め。沖縄に住む人たちが大切にする神と先祖を敬う心に、美恵子の冒険を通して楽しく触れることができます。そして、ウークイで素直な心で手を合わせることができるようになった美恵子の姿に、本当に爽やかに胸を打たれます。

沖縄の映画ならではの、ゆる~い「間」。内地のようにキチンと作ったら、この独特の空気感は出ないでしょう。

照屋政雄、平良とみ、登川誠仁、沖縄の重鎮総出演! 理屈を超えた最高傑作! 私の「心の映画」です。

【ホテルハイビスカス ロケ地

【作品データ】
「ホテル・ハイビスカス」
公開 2002年
監督 中江裕司

久保喜広、1960年生まれ
東京在住ながら20年以上毎夏宮古に通う。宮古移住が夢。
2012、2013年、ぴあフィルムフェスティバル審査員
2013年、日本アカデミー賞特別会員
2014年、東京国際映画祭WOWOW賞審査員
以降、映画祭での審査員、シネマコメンテーターとして活動



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