第10回 「博愛」@宮古島市役所上野庁舎
ドイツ商船ロベルトソン号遭難に始まる博愛記念碑の物語も佳境の5回目となりました。
第一回の講座(2014年9月7日開催)を開催するにあたり、関連する碑-いしぶみ-たちを改めて現地調査してみると、思った以上にたくさんあることが判りました。島の人々がなんらかの形で、その時の記憶を記録として遺そうとしていることがよく判ります。
石碑は書物などの紙や電子記録媒体(BDやCDなど)に比べ、物理的に超長期間の記録をすることが可能です。ただ、石だけに細密な記録はなかなかできなませんが、日常的に石碑を目にすることで人々の記憶から風化することを防ぎ、語り継ぐという効果が実はとても高いのではないかと、愚推するに到りました。
けれど、今回紹介する石碑はこれまでのものとは、かなり趣きが異なり、ある意味では謎のモノリスと呼んでもよいかもしれません。
場所は宮古島市役所上野庁舎(旧・上野村役場)の外れ、日本最南端の国道390号線に面した駐車場の植え込みに存在してます。国道側からみるとこのように丸い球を上部に戴いた黒御影石に「博愛」と縦書きされたシンプルな碑になっています。この碑には特に碑文の説明や建立の記録などは特に書かれていません。
なにより衝撃的なのは、駐車場側から見た碑の構造にありました。なんと碑の下に香炉が置かれた拝所だったのです。拝所の名前やいわれについては現在まで判っていませんが、1873(明治)6年のロベルトソン号遭難に始まり、さまざまな情勢に翻弄されてきた「博愛」という言葉が、遂に拝まれる存在となって神格化がなされたようです。
詳細が未明なままなので解説としてはジョークを含んでいますが、博愛が拝まれる対象になるということには大変驚かされました。この異色の碑について情報をお持ちの方は、ぜひご教示ください。
第一回みゃーく市民文化センター講座のワークショップにて、「博愛」関連の碑について紹介させていただきました。
漲水(西里183-4)にあるホンモノの「ドイツ皇帝博愛記念碑」はもちろんのこと。
第2回 「ドイツ皇帝博愛記念碑 レプリカ」
第7回 「博愛-公爵近衛文麿書-」
第8回 「独逸商船遭難の地-公爵近衛文麿-」
第9回 「独逸商船遭難救助 佐良浜漁師顕彰碑」
そして今回の上野庁舎の「博愛」拝所と、全部で6カ所あるとご報告させていただいたのですが、この「んなま to んきゃーん」を書くにあたって再々調査をしたところ、まだ関連の碑が存在していることが判明しましたので、ワークショップの報告内容を訂正するとともに、こちらで紹介したいと思います。
連載企画 「んなま to んきゃーん」
なにかを記念したり、祈念したり、顕彰したり、感謝したりしている記念碑(石碑)。宮古島の各地にはそうした碑が無数に建立されています。
それはかつて、その地でなにかがあったことを記憶し、未来へ語り継ぐために、先人の叡智とともに記録されたモノリス。
そんな物言わぬ碑を通して今と昔を結び、島の歴史を紐解くきっかけになればとの思いから生まれた、島の碑-いしぶみ-を巡る連載企画です。
※毎週火曜更新予定 [モリヤダイスケ]
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