Vol.10 「キビの穂咲き始める」

atalas

2016年12月02日 12:00



北風がピューピューと吹き、朝夕の気温がだいぶ下がってきた。日中の気温は20度を越えてはいるが風が強いと長袖の上に何かをはおりたくなるくらい寒く感じる。うちの父は、先週からちゃんちゃんこを着るようになった。
宮古の基幹作物のサトウキビは間もなく収穫の時季を迎えるが、穂(方言では「ばらん」地域によっては「ぶばな」と言う)が咲き始めた。宮古はサトウキビ畑が多く、穂が咲きそろうと一面銀世界となり、とてもきれいだ。宮古の冬の風物詩となっている。島を離れている人にとっては深い郷愁に駆られる風景でもある。

サトウキビの穂と言えば、有名な短歌がある。ATALAS Blogの「んなまtoんきゃーん」でも紹介されていたが、宮国泰誠氏の「見わたせば甘蔗のをばなの出揃いて雲海のごとく島をおほえり」だ。「をばな」が、「穂」(宮古方言研究会の新里博先生によると、わ行の「を」は、宮古では「ば」行となることが多く先に書いた方言の「ぶばな」は「をばな」が語源とのこと)。

この歌のことは大人になってから知ったが、子どもの頃から見慣れている風景が見事に描かれていて、まーんてぃ あんちーやー(誠にそうであるよなー)としみじみと感じ入ったのを覚えている。昭和45年(1970年)、宮中詠進歌に入選した作品だそうで、宮内庁のホームページの「歌会始」の「昭和45年歌会始お題『花』」の中に掲載されている。

ところで、宮古に2年半前に帰ってきて、昔ほど、ばらん(穂)が咲き揃わないなーと感じることがあり、農業をしている兄に聞いたところ、ばらん(穂)が咲かない品種もあるよと言われ、びっくり仰天。冬になれば当たり前に咲くものだと思っていたが、そうではないものがあるとは。じゃ、じゃ、あの雲海のごとく島をおおう冬の光景はどうなってしまうのだ!?いつか無くなってしまうのだろうか。昨年は気もそぞろで、この時季のキビ畑を見て回った。思ったほど減っているようには感じず、ホッと安心をした。推測だが、その前の年は、穂がでない品種が多く植えられていたのかもしれない。
時代とともによりよい品種に変わっていくことは仕方のないことだと思うが、この風景はいつまでも続いてほしいなーと思う。

この時季から3月ごろまで見られるサトウキビの穂。今年は、高台から「雲海のごとく島をおおう」景色を眺めてみよう。


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