Vol.31 「ノビル」
ここのところ、暖かな日が続いている。
そんな中、サトウキビは、ばらん(穂)を咲かせ始めた。冬は確実に近くまできているようだ。
先月、小さな かふつ(家の敷地内の畑)に、ミニトマトや春菊、ネギの苗を少しばかり植えた。
暖かいせいか成長が早く、ミニトマトには実が生り始めた。
そのそばでは、ノビルがツンツンと細い葉を伸ばしている。ノビルは春のイメージだが、宮古では11月~12月ごろ出始める。
4年半前、東京から宮古に帰ってきた。
実家の近くに住み、周りをよくウォーキングした。ある日、キビ畑でノビルを見つけた。長いこと見たことも食したこともないノビル。あまりの懐かしさに近くの牛小屋にいたお兄さんにもらっていいか聞き、畑に入り採った。
帰る道すがら50年以上前の幼稚園の頃が蘇ってきた。
幼稚園は、家から1キロくらい離れた公民館。幼馴染みのT子と一緒に歩いて通った(当時、親の送り迎えはなかった。遠くても子どもだけで通ったのだよ)。幼稚園までの道のりは、季節ごとにいろいろな楽しみがあった。
特に帰りは、♪いーとーまきまき、いーとーまきまき と二人で歌い、野イチゴ、バンチキロー、桑の実、サトウキビ(運搬しているトラックから落ちたのを見つけた時の喜びと言ったら。笑)など採って食べながら、のんびり帰った。
そして、この時季はノビルだ。当時もキビ畑の中や傍に多く見られた。見つけるとかけより、たくさん採って帰るのだった(今思うと、なんとも渋い幼稚園児二人)。母も喜び、油みそにしたり、卵焼きに入れたり、みそ汁に入れたりした。香りがなんともいい。
子どもの頃は、いろいろな木や木の実、野草などがとても身近にあった。今また同じものに合うと、とてもうれしくなる。
幼い頃の自然とのふれあいは、大人になっても心を満たしてくれるものだとつくづく感じる。
これからしばらく、ノビルの味と香りを楽しむとしよう。
松谷 初美(まつたに はつみ)
1960年生 下地高千穂出身
2001年より、宮古島方言マガジン「くまから・かまから」主宰
30年住んでいた東京から昨年Uターン。現在下地に住んでいる。
毎日が新鮮。宮古の魅力を再発見中。
宮古島方言メールマガジン『くまから・かまから』
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