その5 かあちゃんが3人。島の子育て共同体
宮古島には子どもが多い。
宮古島市の出生率は2.27。お隣の多良間島はなんと3.14という突出した数字が物語るように、宮古・多良間は日本一子どもが多い島なのだ。
出生率とともに離婚率も高いからシングルマザーも少なくないし、再婚し、さらに子どもを産み育てる女性も多い。3人、4人と子を抱え、働き、時には一家の家計を支えるという大仕事をこなす彼女たちだが、そこに悲壮感はない。いつもどこか突き抜けた明るさと朗らかさに満ちているのだ。
ジュンリは「母」、ミーホは「おかあさん」
そしてわたしは「かあちゃん」
子どもたちにとっては、わたしらみんなが母親
カズミは最初の結婚で子どもを産んで離婚。佐良浜に戻り再婚し、もうひとりの子どもにも恵まれた。カズミをかあちゃんと呼ぶのは、彼女の子どもたちだけではない。たとえばジュンリやチーチャン、シングルマザーのミーホの子どもたちにとっても、カズミは「かあちゃん」なのだ。
自分の子どもも仲間の子どもも、「かあちゃん」として分け隔てなく世話をする。母親たちはみんな仕事を持っているから、子育ては共同体。赤ん坊のころから、忙しいときはあずけあい、保育園の送り迎えも子どもが熱を出した時も、かわるがわるで面倒を見合う。子どもたちにとっても、それは自然なことで、今日の「かあちゃん」も明日の「母」も、優しく厳しく等しく、自分たちを守ってくれる親なのだ。
ずっと昔からそんなだったよ
隣の家の子どもたちと兄弟みたいにして育ててきたよ
島には、女と子どもばかりだから
おばあ世代が子育てをしていた頃、佐良浜の男たちはみなカツオ船に乗っていた。1年のほとんどをサイパンやソロモンなど南洋で暮らし、島に帰ってくるのは正月の時くらい。当時は、父親と息子が1年船に乗ったら家が建つという時代だった。
女たちは、畑をやり、カツオ節工場で働き、子どもたちを育て、家を守って島を守る。彼女らが共同で子育てをするのはごく自然なことだったはずだ。
時代も環境も変わり、イクメンなどと呼ばれる人たちが活躍する今も、女たちの子育て共同体は健在だ。それは、「ママ友」などというあいまいな関係とは根本的に違う、もっと本能的なものなんだろう。男はいずれいなくなるかもしれないが(男性諸君ごめん!)、おばあ、母、子どもの系譜は裏切らない。最も安心なセーフティネットの中で、みんなうらやましいほど楽しそうなのだ。
9月。地元の小学校の運動会には、テントの下におじいとおばあ8名と親たち7名、幼児から小学校までの子どもたち12名が大集合していた。
あふれるほどのごちそうを囲み、笑い、声援を送る。パワーがみなぎり、幸福が広がる。来月吉日には小学校のグラウンドを借りて、子育て共同体主催、プライベート運動会を企画中だという。
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