Vol.12 「キビ刈り」
製糖工場の辺りには甘い砂糖の匂いが漂い、キビを積んだトラックがせわしなく行き交う。宮古は今サトウキビ収穫の最盛期を迎えている。
畑には、手作業でキビ刈り(「キビ倒し」ともいう)をする姿やハーベスター(キビを倒すマシーン)が、ガガガガと音を立ていっきに刈り取っていく様子が見られる。それにしてもハーベスターの威力たるや。最初見た時の衝撃はいまだに忘れられない。
それはさておき、昭和30年、40年代はほとんどの農家がサトウキビ中心の農業だった。その収入で、子どもたちを高校、大学へと進学させた。
当時のキビ刈りは、隣近所「ゆいまーる」で行われ、たくさんの人が畑で作業をしていた。もちろん、手作業で。鎌でキビのすぅら(空、先端のこと)を切り、斧で根っこを刈りとり、重ね、山にしていく。そしてキビの1本、1本の葉柄を鎌で落とし、直径50センチくらいの束にしていく。昔の宮古の冬は今よりも寒く、また雨が多いので雨具姿で作業している姿もよく見られた。
そんな中、小さい子どもたちは(保育園もなかったので、小さい子も親に連れられ畑に行っていた)、刈り取られた葉の束を集め、立てかけて、それをかたか(風よけ)にして、遊んでいた。歯でキビをむき、割りばしに刺して、アイスケーキ!と言って食べていたっけ。
昼ご飯は畑でみんなで食べた。あわんつ(油みそ)のおにぎり、たまなー(キャベツ)の味噌汁は、ばっしらいん(忘れらない)味だ。
2、3日かけキビ刈り作業をし、製糖工場に出す日には、コンベヤーに乗せ、トラックの荷台に積んでいく。トラックの荷台には、男の人が2~3人いて、上がってくるキビの向きを考えながら並べ、積み上げていた。バランスよく積み上げないと、輸送中に落ちてしまうので大変だ。実際、道に落ちているキビもよく見かけた。また、トラックを追いかけて、キビを引き抜く、剛の者もいた。
んきゃーんの やらびは、まーんてぃ ぼーちらど やたあ(昔のこどもは、本当にやんちゃであった)。
今年のキビは、昨年に続き天候に恵まれ、糖度も高く高品質とのこと。沖縄製糖工場内には、順番を待つトラックがいっぱいだ。
時代が変わり、やり方も変わっていくが、この季節にキビ刈りが行われ、甘い砂糖の匂いがしてくるのは昔と同じ。
そして、その収入は生活の糧になり、子どもの未来にも繋がっていく。
キビの収穫は3月ごろまで。
すべてが無事に終わりますように。
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