Vol.9 「秋は種まき」
先月末まで最高気温30度を超える日が続いた宮古。ここ数日風が北風になり、気温もやっとがま、30度を下回るようになった。
今年は台風も宮古をかすめる程度で、ぴんなぎ(変な)夏だった。台風が来なかったので、バナナの木やまんじゅうぎー(パパイヤの木)は倒れることなく実がたくさん付き豊作。実家のまんじゅうぎーは、これでもかというくらい伸び、見たことない高さまで成長をしている。
車を走らせるとトックリキワタのピンク色の花が青空に映え、目を楽しませてくれる。子どもの頃、宮古でこの花を見たことはなかったが、最近は空港入口や馬場団地、レストランばっしらいんの前など、うまかま(あちこち)でみかけるようになった。この花を見ると秋が近づいていることを実感する。
畑では、むずふず(作物)が成長する季節となった。宮古では、白露(9月7日ごろ)を過ぎた頃や寒露(10月8日ごろ)を迎える頃に穀物や野菜などの種や苗を植える。大根や人参、たまねぎ、にんにく、豆類、さつまいも、かぼちゃ、ごーら(苦瓜)などが植えられ、これから冬に向かって成長していく。
今はほとんど栽培されていないが、その昔、宮古では粟や米を栽培していた。民謡「豊年の歌」では、
んなま(今) まく(蒔く) 粟ぬどぅよー 10月まく゜ くみ(米)ぬどユーヤナウレ
と歌われている。
ここでいう10月は旧暦の10月のことで、新暦の11月ごろのことだ。昔はこの時期、種まきをする姿があったんだね。
種まきに関することわざに
「うす ぬ ぴさ みすず(牛の足跡に3粒)」というのがある。小さい粒の粟を均等に蒔くのは大変難しく、「牛の足跡くらいの広さに粟粒が3粒落ちるように見当をつけてまけばよい」という意味なのだそうだ。
昔は、栽培本があるわけでも、インターネットがあるわけでもない。口伝えに先人たちの知恵は繋げられてきた。
宮古は、夏の野菜が少なく店頭に並ぶのはほとんどが内地からのものだ。それも台風の影響などによって、今年は特にたかだい(高値)で、キャベツ1玉490円なんてのを見ると手を引っ込めてしまう。
幸い、まんじゅう(パパイヤ)は豊作。ニラも宮古産は100円くらいで買える。トウガンも日持ちがするので常備。粟を栽培していた頃は、宮古産のものだけで生活をしていたのだ。知恵を働かせなくてはねと思う。
冬になれば宮古産の野菜がたくさん出回る。
豊作でありますように。ユウヤナウレ。
※参考資料『沖縄・宮古のことわざ』佐渡山正吉著
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